移動ド・ソルフェージュは、ギター奏者に最も受け入れられやすいメソッドで、指板のポジションを変えるだけで簡単に移動ドができてしまう。
と思っていた。最近、ギターがメインでピアノを習い始めた生徒が、ピアノで移動ドができるのにギターでは難しい、ポジションが分からないという。
どうやらギターのタブ譜の感覚が原因のようだ。
タブ譜(tablature、guitar tabs)は、ギターの6絃を表す線上に押さえる指板のポジションが数字で書かれている。楽譜が全く読めなくてもギターが弾けてしまうという便利なもので、楽譜が読める場合でもどの弦を弾いたらいいかが分かるので、最近のギター用の楽譜では五線の楽譜と二段で採用されていることが多い。
タブ譜と移動ド・ソルフェージュの関係を考えてみた。
タブ譜を上段に書いたが通常は下が多いかもしれない。五線譜の上には左手の指番号が入っているので、どの指で指板のどのポジションを押さえたらいいか分かる。下にはソルフェージュの歌い方例として、12音ソルフェージュを書き入れた。
このメロディーの場合はコードに対して同じメロディーなので、一つ高い方の弦に移動するだけで簡単に弾くことができる。(ただし、第2弦、1弦が入るときは、3小節目のように少し変わる)
この場合は同じフレーズが4度上昇しているだけなので、次のようにコードのルートをドとした歌い方が便利な場合がある。
移動ドに慣れてくるとキー(調)のトニック(主音)をDo とする歌い方(いわゆる移動ド)とコードのルートをドとした歌い方を混在することができるようになる。
次の例はBbキーに移調した場合であるが、指番号もソルフェージュも変わっていないがタブ譜のポジション番号だけが変わっている。
楽譜でソルフェージュで歌いながらギターを弾く場合は、Doの位置が(または最初の音の位置)が分かればDo-Re は全音なので1フレット飛ばし、Re-Miも同じ、Mi-Solは短3度なので2フレット飛ばし、So-Teも短3度、弦を高音弦に移す場合は、MiはDoの隣弦の一つ下 ・・・のように弾いていくことができる。
これらを続けていくことで移動ド・ソルフェージュと絶対音(C, D ,E ….)との関係が覚えられ、他の楽器でも移動ドが楽になってくる。
タブ譜はどの弦のどのポジションを抑えたらよいかが分かるので便利だが、次の楽譜のように第1弦から第6弦を表示(楽譜の下の番号)することで、弾くポジションを知ることはできる。
次はBbキーに移調したときの例だが、このように少し移調してもギターの場合は全体の指板の位置が変わるだけで、指番号も使う弦もソルフェージュも何も変わらない。
ピアノでもスケールで動くようなメロディーの移動ドはそれほど難しくないが、インターバルが大きく動く場合は移動ドと絶対音の関係が分からなければ難しい。しかし、ギターやベースの場合は、例えば、Do – Fa と歌う場合も、Re – Sol、Mi – La、Fa – Te、Sol – Do、La -Le、Ti – Mi 等などすべて高い方のすぐ隣の弦を弾いたらいい(ギターの第3と第2弦間を除く)。場合によっては同じ弦で5つ上のフレットを弾く場合もあるが、ほとんどは二者択一である。
移動ド・ソルフェージュで歌いながらギターを弾く練習を続けることでソルフェージュの言葉が次のポジションに指を運んでくれることになる。
初めの内は考えながら練習するが、それがルーチンとなり、ソルフェージュの言葉と指が直結して働く。