移動ド・ソルフェージュ(12音)の優位性と比較

日本で使われているソルフェージュや音名、階名について比較し、「ジャズ ソルフェージュ」で採用している移動ド12音階ソルフェージュについて、その重要性を考えてみた。

日本で移動ド12音階対応のソルフェージュが広まらなかったのは、Do Re Mi ….をカタカナ表記に変えてしまったのが原因と考えられる。

なぜ、カタカナにしてしまったのか? それは外国語はカタカナで表すという慣習(?)なのか、敵国語を禁止した為なのか?

英語表記のソルフェージュの言葉には意味がある。しかしカタカナに変えてしまうとそれらは無くなってしまう。

小学校から英語を習う時代である。もう英語表記でいいのではないかと思う。

(1) 固定ド 7音名ソルフェージュ

イタリア語のDo Re Mi Fa Sol La Si をカタカナ(低学年ではひらがな)に変え音名(固定ド)唱法とした代表的な日本のソルフェージュで、音大の入試で使われることもある。

上はAbキーの固定ド唱法で臨時記号が付いた場合、どのように発声(上段)しなければならないかを表している。例えば最初のラ♭(A♭)音はラより半音低いピッチでラと発音する。

これは「ハ調読み」または「白鍵読み」と言われ、ピアノの黒鍵音を近隣の白鍵名で 歌わせる方法である。

固定ド唱法は臨時記号や調号の♭や♯が少ない場合はなんとか歌うことができるかもしれない。しかし、この例のA♭キーの場合は7つのスケール音(○で囲った音)だけでも4つの音を半音低くして歌わなければならない。

ファ♭はミと同じ音高だがファと歌い(*4)、ド♭はシと同じ音高をドと歌う(*2)不合理性。

ミ♭♭はレと同じ音高だがミと歌い(*3)、シ♭♭はラと同じ音高をシと歌う(*1)不合理性。

ファ♯とソ♭は同じピッチだが歌い方はそれぞれファとソになる(*5)。

このように*で表した音は上行形と下行形で歌い方が異なる(異名同音/Enharmonic)。異名同音はあって当然だが、その発音がスケール音と同じということに無理がある。

ダブルフラットは、見やすいように レ♮(*3)やラ♮(*1)で書かれる場合がある。またF♭はE♮とC♭はB♮と書かれることがあるが、理論的には上の表現が正しい。

小学校でCキー(ハ長調)だけで臨時記号のない楽譜を歌う場合は問題ない。中学校でFキー(ヘ長調)を歌うときはファ・ソ・ラ・シとシの音を半音低く歌って切り抜けてきた(固定ド)。高校では音楽は専攻しなかった。文科省の指導要綱では移動ドで教えるということになっているが、音楽教師にある程度任されているので固定ドで歌わされた。。。。という人が多い。

以上のようにこの唱法は調号の♭や♯、また臨時記号が多くなるにしたがって難しくなり、絶対音感があるなど音感の優れた学習者でないと歌うことが困難である。

音感トレーニングためのソルフェージュだが、絶対音感がないと歌うことが難しい、という最悪の歌い方かもしれない。

(2) 移動ド 7音階ソルフェージュ

これも日本で使われている移動ドで、Abキーの異動ド唱法で臨時記号が付いた場合、どのように歌わなけばならないかを表している。

移動ドの場合は、従来の7音でも臨時記号がなければ非常によく機能し、合理的である。メジャー・キー(長調)で臨時記号が出てこなければ中学校までなら使用できる。しかしながら、ハーモニック・マイナー(和声的短音階)やメロディック・マイナー(旋律的短音階)の旋律が含まれる場合や臨時記号が少しでも含まれると、どう歌うかという問題が出てくる。

ソルフェージュの利点として、ソルフェージュの言葉でインターバル(音程)が正確に歌いやすくなる、または、ソルフェージュの言葉で簡単に譜面に書き起こすことができる、ということがあるが、7音以外の音高が混じるとそのような訓練に弊害をもたらす。

この移動ド唱法では臨時記号の場所だけ気をつければいいが、7音のソルフェージュでは固定ドと同様に、同じソルフェージュ(発声)で半音異なる音高を歌う問題が残り、インターバル感覚の育成に支障が生じることが残る。臨時記号の多い音楽スタイルの場合は歌うことも難しくなる。

(3) 英米式 (絶対音12音名ソルフェージュ)

これは日本や英語圏で広く使われているAbキーの絶対音を表す音名表記。

ソルフェージュの言葉として歌われることもあるが、歌いにくいこと、♭や♯が付いたときに長くなり歌えないという欠点がある。

移調しないで音符の位置をそのままにしてCキーとして読むということになる。その時♭や♯が付けばアルファベットの後にフラットやシャープを付けて読むというシンプルなものである。E♭♭はE ダブルフラットと読む。

ポップス、ロック、ジャズなど、クラシック音楽以外では絶対音を表すのに一般的に使われている。コード表記、スケール表記のほか、調の表記はクラシック曲では曲名の一部として調を表すのに使われる。

(4) ドイツ式表記 (絶対音12音名ソルフェージュ)

これは日本で特にクラシック音楽で使われているAbキーの絶対音を表す音名表記でドイツ語読みをする。 ♭や♯の代わりに特別の言葉で表すが、その基本は半音下げるときは”es”を、上げるときは”is”を付けるが例外がいくつかある。

オーケストラでは移調楽器の存在で絶対音で表現する必要があるが、ソルフェージュとしても音名として歌われる。

♭、♯、ダブル♭、ダブル♯を含めると35に上るソルフェージュを歌い分ける必要があり、ソルフェージュの言葉も歌いにくい。

(5) 日本式表記 (絶対音12音名表記)

日本で曲の調を表すのに一般的に使われている。イロハニホヘトは英米式のABCDEFGに、変は♭、嬰は♯、重はダブルに相当する。

このように西洋から来たものを無理に日本語に当てはめた表現が多くあり、音楽をより複雑なものにしている。

(6) 度数表記 (12音階名表記)

7音で歌う場合は各国の数字の発音で歌うこともある階名唱法である。日本では古い数え方でひー、ふー、みー、と歌う「ひふみ唱法」も提唱されたことがあったようだ。

上のローマ数字表記はコード表記に下のアラビア数字は度数を表現するときに使われる。

(7) 固定ド 12音名ソルフェージュ

固定ド 12音ソルフェージュは、ドイツ式表記と同様に、♭、ダブル♭、♯、ダブル♯でそれぞれ違うソルフェージュを歌うため、35種類のソルフェージュを歌い分ける必要がある。 

C♭、F♭、B♯、E♯、ダブル♭、ダブル♯については様々な歌い方のソルフェージュが提唱されており、どれを選んだらよいか迷う。

この音名をカタカナ表記にして歌うソルフェージュも提唱されている。しかし、カタカナに変えると、3組の同じカタカナ表記で音高の違うソルフェージュが出るため、いくつかのソルフェージュが提案されている。しかし複雑である。

(8) 移動ド 12音階ソルフェージュ

英語圏で広く使われているソルフェージュで、Berklee音大でも採用されている。

移動ド 12音ソルフェージュでは7音のソルフェージュに加え、上行形(♯)は母音を ” i “に変えた5音、下行形(♭)は母音を ” e “に変えた5音(1音の例外あり)の計17のソルフェージュで構成される。

① 母音を変えるだけなので、簡単にソルフェージュ名が覚えられ、また実際に歌い易いのが大きな特徴。

② インターバル(音程)を意識してソルフェージュを練習することで、ソルフェージュの言葉によりインターバルを正確に楽に歌えるようになる。

③ ソルフェージュで歌うことでメロディーが覚えやすくなるだけでなく、一度覚えたメロディーは容易く出てきて忘れ難くなる。

④ 覚えたメロディーはキー(調)が変わっても歌ったり演奏することができる。

⑤ 聞こえてくるメロディーがソルフェージュで認識できるようになる。

⑥ 覚えたメロディーは臨時記号も含め正確に楽譜に書き写すことができる。

⑦ ソルフェージュで歌うことで自然とメロディーのアナライズができる。

⑧ それぞれのソルフェージュの言葉には意味がある(例えば、Me は Re に向かう傾向があり、ブルーノートであったり、マイナーを意味したりする)が、それらを理解することで自然なメロディーを作ることができる。

(9) その他のソルフェージュ

以上の他、実際に日本で使われている音名、階名は、日本の古式音楽で使われる表現やイタリア式、フランス式、中国式など様々なものが存在する。

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