Spring can really hang up the most アナライズ

Spring can really hang up the most(和名:春が来たのに) はTommy WolfがFran Landesmanの詩に曲を付けた1955年の作品。歌詞の内容は春の憂鬱を歌ったもので作曲手法にも歌詞の内容が大きく影響している。曲をアナライズする時にメロディーのアナライズは重要だが、先に歌詞がある場合は歌詞の内容も考える必要がある。

春と心の不安定を表現するための手法としてModeの変化(Modal interchange)と転調が使われている。形式はAABA”であるが1コーラス8+8+8+10と全34小節となっているのは歌詞による影響かもしれない。Tommy Wolf はピアニストであり作編曲家であるが、後にミュージカルも手がけており、これらの手法はミュージカルでよく見られる。

コードのアナライズは以上のようになったが、なぜこうなったかメロディーも見ながら説明していく。なお、この曲にはVerseもあるが省略する。

①  Bb maj7 はC Mixolydian modeから借りてきたモーダル・インターチェンジ・コードの bVII maj7 である(ボサノヴァ&ジャズ アナライズ集 p.9 Dindi 参照)

② #IV7(b5)の前の小節の A7 は偽終止を起こしているが、なぜ F#-7(b5) に偽終止が起きるのか。これは “imitating V7 to III-7″という言葉で説明される。つまり、Cキーの場合 G7はE-7 に偽終止が起きるが、同じ関係にある全音上のA7 も F#-7 に偽終止が起きる。(この場合のF#-7が b5 となっているのは b5 がキーのトニックであるから)

② #IV-7(b5) はrelated II-7(b5) of V7/IIIとして見られることが多い( つまり V7/IIIとの間で II – V となる:F#-7(b5) / B7 / E-7 、 )が、このように IV-7 へのアプローチ・コードとして働くことも多い。

③ この曲で一番難しい箇所であり、いくつかの解釈が成り立つ。 G-7とCmaj7 は同じスケール上のコードではないのでどちらかがモーダル・インターチェンジ( MI )コードである。

(解釈1)メロディーだけみると7度がフラットしてMixolydian にmodeが変化したように聴こえる。その場合はC7コードが I 7 となるので、G-7はV-7、Cmaj7が I maj7で MI コードとなる。移動ドでの歌い方は C が I コードなのでそのまま Te Do Te Do と歌えばいいので歌いやすい(Do based mixolydian)。気になるのは トニックコード( I 7 )がMI コードに代わっていることと弱拍に来ていること。

(解釈2)V-7(G-7)は冒頭で使われる bVIImaj7 と同じ目的(7度をフラットしてブルースフィーリング)で使われるMI コードという解釈。しかし、この場合も曲頭と同じくCmaj7が強拍である1拍目にくるのが普通。

(解釈3)Cmaj7 が IVコードに向かう時、G-7 / C7 となるがこのC7 が MI コードのCmaj7になったという解釈。メロディーとコードは繰り返されており、Vamp 的なパートになっているのがこの解釈の理由。よって元の形をG-7 / C7 の繰り返しと考え、C7 が Cmaj7 に代えられた。作曲年がまだModeの概念がジャズに取り入れられてなかった1955年ということもあり、よくある G-7 / C7 | G-7 / C7 |G-7 / C7 |G-7 / C7 | の変化とした。

F キーのC7と考えた場合、C maj7は F Lydian Modeからの MI コードとなり、コードスケールは Ionianとなる。

(解釈4)解釈1でトニックコードが MI コードになっていて弱拍にあるのが問題なら、強拍の G-7 を I-7 と考えればどうだろう( G Dorian に転調したことになる)。移動ドでの歌い方も Me Do Te Do となり、一番しっくり来るように感じる。C Maj7 は G Dorian の IV7 が G Mixolydian の IVmaj7 に替えられたと考えることになる。

いずれの解釈もG-7 は Dorian 、Cmaj7 はIonian になるのでコードスケールは同じであるが、移動ドで歌った時の雰囲気が少し変わる。

④ ここはメロディーとコードが同じように動いているので転調である。5度下に転調しておりBbキーとしたが、いずれかの解釈の平行調(Related Mode というべきか)である。

⑤ 転調している場合の移動ドでの歌い方は難しいが、この場合は前の音の半音下からSol Sol Sol Sol Ti と歌い、次の小節で半音上からLa La La La Ti と歌えばいい。

⑥ ここはピボット・コードを使ってうまく転調している。

⑦ 前の小節で Gキーになっているのでこの小節を移動ドで歌うのは難しくない。

⑧ 急にC キーに転調しているが、La の音をイメージしてMi と発声し同じメロディーを歌うことで 歌える。

⑨ メロディーを考えるとDbに転調しているように見えるが、単なるアプローチの II – V 

⑩ ここから2小節はドミナント・ペダル。結果としてD-7/G は Hybrid chord で、G7sus4 と同じコード 

(11) この場合のDbmaj7 は Cmaj7 の半音上のコードでアプローチコードであるが、G7やその裏コードのDb7よりもメロディーとの関係でマッチしたから使われたのではないか。

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