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なぜ、耳のトレーニングなのに声に出して歌うのか?

バークリーのイヤー・トレーニング(E.T.)のクラスはそのほとんどがソルフェージュを声に出して歌うことでした。もちろん Do の音を与えられてからメロディーを聴かされ、それを楽譜として書き取る( Dictation) 練習もありましたが、それは少なかった。それはなぜか? 

この理由についてはどこにも書かなかったので、ここに書くことにします。

E.T. のクラスでは、授業中にたまに Dictation の試験があるのだが、同時に鳴らされた2音を聴き取るという試験がどうしても聴き取れない。そこでダイアトニックな2音の組合せを楽譜ソフトで作り、それをピアノ音で再生して聴き取る練習をした。何回も練習してほとんど分かるようになった。それで試験に臨んだのだが、結果はひどいものだった。

音を聴いては正解を覚えて行けば、それは確かに聴き取れるようになる。一般にもCDを聴いて答えるイヤー・トレーニングの練習方法もある。しかしその音色が変わるとどうだろう。私が覚えたPCで聴いた音色と教室のテクニクスの電子ピアノの音色は相当違っていた。どうやら私の練習では2つの音が同時に鳴った時のサウンドの違いで判断してようだ。だから楽器が違うとそれがまるで判断できなかった。

自分と同じ楽器は聴き取れるが、違う楽器は難しいというのは誰もが経験することだと思う。口に出して歌うというのは、様々な音色の音を自分の声に置き換えて慣れることでそれらを聴き取れるようにするということなのかもしれない。

しかしながら、一番大事なのは、ソルフェージュを声に出して歌うことは自分のボイスでピッチをコントロールすることである。当然、コントロールするには自分のボイスを必然的によく聞くことになる。この練習がイヤー・トレーニングとして最も重要で効率的なのであろう。

ピアノやギターなどの音程をコントロールしない楽器奏者や普段あまり歌を歌わない人にピッチが悪い人が多いように思う。恥ずかしがらずに声に出して歌ったほうがいい。

声が出せないところでの練習で、サイレント・シンギングという頭の中で歌う方法もあるが、聴くということがないので効率は良くない。また、ソルフェージュで歌った音源を聴くこともある程度効果があるが、楽譜を読む練習というソルフェージュの大事な役割が果たせない。

ソルフェージュを声に出して歌っていますか?

自分の出した声をよく聴いていますか?

この2つをしないでソルフェージュを挫折した人はいませんか?

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12音移動ド ソルフェージュと異名同音

Q: F♭、C♭、E♯、B♯やダブル・フラット、ダブル・シャープはどのように歌えばいいか?

現在、Dbメジャースケールの曲をピアノで練習しているのですが、La(Bb)にダブルフラット、Sol(Ab)にナチュラルがついている箇所があります。 いずれも結果的にAなのですが、前者(Bbにダブルフラット)はLeと読めば良いのでしょうか。それともダブルフラット用の読み方があるのでしょうか? 後者(Abにナチュラル)はどう読めば良いでしょうか? Siでしょうか、Leでしょうか? 楽譜的には、音が下がっている箇所なのでLeなような気がしますが、それならBbにダブルフラットになっていないのは何故かと思ってしまいます。

また、この楽譜にはCbが出てきます。Cb=BなのでTiなのかもしれませんが、そうだとするとピアノの黒鍵に該当するところは同音異名なのに白鍵に該当する部分はそうでないという例外があるということになってなんだかとても気持ち悪いです。

気持ち悪いので色々探してみたところ作曲家・指揮者の佐藤賢太郎さんがバークレー式にさらにCb・E#・Fb・B#に名前をつけたものを提唱していました。 http://www.wisemanproject.com/edu&res-solfege-j.html これによるとCbはDeとなっていました。

色々悩んでしまうと、同音異名を使わない方式でやって何か問題はあるのだろうかと思えきました。 例えば西塚式(https://www.isc.meiji.ac.jp/~katotoru/acco-concertina04dodereri.html)。 このような方式なら、今回の質問のような悩みはなくなるのですが、こういった同音異名を使わない方式でソルフェージュして何か問題は発生するでしょうか?(2020.08.22_S.N.)

A: 確かにダブルフラットやダブルシャープが出てきて困惑することがあります。また、C♭やE♯ などが出てきてどのようにソルフェージュで歌ったらよいか迷うときがあります。これらにはいろいろなソルフェージュが提唱されています。しかし、これらは固定ド唱法で出てくる問題であって移動ド唱法では不要となっています。

ご指摘の例で説明すると、La(Bb)にダブルフラットはLaが半音下がった音であり、Leになります。このダブルフラットは、元々調号に♭が付いているので一つフラットしただけで2個の♭になったものです。Cキーに移調するとAに1個の♭となると思います。

Sol(Ab)にナチュラルは、Cキーに移調するとGに1個の♯となるはずです。従って、これは Si です。通常 Si は上行しますが、これがセカンダリー・ドミナント(V7/VI)でVI-7コードに向かっていたらコード音(CキーでE7)のSi ということもあります。

CbはDbキーでは Ti (C) の♭になります。よって、Te で問題ないです。

上は Dbキーにおける12音移動ド・ソルフェージュです。音楽理論的にはこの表記になります。しかしながら、これらは読みやすくする(実音での)ために、 C♭はB♮に、B ダブルフラットはA♮に、A ダブルフラットはG♮に、F♭はE♮に、E ダブルフラットはD♮と表記されることがあります。

このように表記が変えられた場合は、メロディーの方向や臨時記号の付いた意味を考えて本来の表記として歌った方がいいでしょう。

例えば、DbキーでE♮(Ri)の音の場合、向かう音がReで、ブルーノートのMeの様に聞こえる場合、正しくはF♭でMeと考えられる。

もう一つ例を、Cキーで、subV7であるDb7のコードトーンC♭がメロディーとして書かれた場合どう歌うか? もちろん、Tiですね。本来 Bで書くのが正しいと思うし、コードはG7に変えられる。

しかし、この様に歌わなければならないということはなく、同じピッチの音なので理解の範囲で変更して歌われたらいいと思います。

もし、どの様に歌えばいいか分からない場合は、この項のコメントに楽譜または曲名を提示して投稿してください。歓迎します。

今回非常に興味深い質問をいただきました。質問は固定ド唱法と移動ド唱法の違いによるものですが、12音移動ド唱法では7つのスケール音名と上行5つ、下行5つの計17のソルフェージュで全ての音符を表現できます。

固定ド唱法では、前述の様にダブルフラットやF♭などを表現するため、更にたくさんのソルフェージュを必要とします。

クラシックではドイツ式のソルフェージュ(固定C)が使われますが、ダブル・フラットやダブル・シャープ、F♭、C♭、etc. 全てに名前が付いていますが、その総数は35(7×5)程になります。歌い難いです。

エンハーモニック(異名同音)については、異名同音enharmonic-の歌い分けに、セカンダリー・ドミナントにおける臨時記号についてはTendency Tones(続)に関連記事があります。

最後に12キーのクロマチックなソルフェージュを載せておきます。

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部分転調は転調か?

Q: ツーファイブなどの部分転調と言われいる部分の歌い方はどのようにすればいいのでしょうか?

たとえば、moment’s noticeの冒頭2小節のEm7-A7はキーをツーファイブの解決先であろうDmajとしてReをドと読んで進めていくのでしょうか?それとも曲のキーであるEbmajであるEbをドとして読んでいくのでしょうか?

どちらにせよ前者であればツーファイブ上での音の役割は理解しやすそうですが頻繁に転調していくので頭を切り替えていくのが大変な気がしますし、後者は読み方は楽ですがツーファイブ上での役割というのは階名からは見えてこない気がします。もしくはまだ理解できていない部分が多いのですがモードの切り替えをすればうまく解決出来るのでしょうか?またセカンダリドミナントやダブルドミナント、エクステンデッドドミナントなどの本来のキーから離れていった時にどのように対応すればよいのかが、わかりません。長くなりましたが結局のところキーから外れたツーファイブ部分をどう歌えばいいのかがわからないのだと思います。基本的な事だとは思うのですが何とぞ回答のほどよろしくお願い致します。

A: この問題はセカンダリー・ドミナント等をどのように理解するかということにあります。

これを「部分転調」とするという考え方が日本にあることは知っています。部分転調を転調と考えると、確かにご指摘のような問題が起きてきます。

クラシックの有名な音楽理論書「Tonal Harmony」や Berklee ではセカンダリー・ドミナント等は転調とは考えません。

ここで詳しい説明はできませんが、メロディーの場合は Cキーで他のキーで出てくるC#やBbの音が使われていても必ずしも転調にはならないですよね。

コードでも同じことが起きていると思ってください。

これはセカンダリー・ドミナント コードとは何か、ということを理解すれば分かることですが、クロマチック・テンデンシー にヒントがあります。

ダイアトニック・コード以外のコードが使われた時はそのキーを保持するようなコードスケールを使い、できるだけトーナルセンターを保持するようにします。このコードスケールは難しいものではなく、コード トーン以外の音をそのキーの音にすればいいだけです。(ドミナントは不安定ですぐに解決するので、オプションとしていろいろなドミナントスケールが可能です)

Moment’s Notice ですが、アナライズで書いているように、この曲は一度も転調していないと考えています。

従って、この曲のContiguous II-V 部分においてもメロディーに同じ音を使っており、Ebを Do として全体を歌うことができます。

(メロディーとコードが同時に動くContiguous II-V を使った曲では転調と同じ歌い方が必要になります。)

エクステンデッド・ドミナントやエクステンデッド II – V では、メロディーが一緒に動いている場合は転調として歌う必要があります。しかし、同じメロディーなので難しくはありません。同じエクステンデッド・ドミナントでも例えばビバップ・ブルースの例では転調とはならないです。

日本語の音楽用語は紛らわしいものが多いですが、部分転調もその一つでしょう。実際に部分的な転調と考えられていたのかもしれませんが、部分転調は転調と考えない方がいいと思います。転調と考えると難しくなるだけでなく、トーナルセンターの保持も難しくなります。

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Sol-Faの歌い方について

読者の質問から

Q:

p44のsol-faを歌うについて疑問があるのですが、

「ジャズソルフェージュ」44ページ

3-56   do re mi re …

とあるとすれば、reを確認したあとに一旦またdoを弾いてからmiについて同じことをするのでしょうか?それともreを確認したあとにdoにはもどらずmiをイメージして同じことをするのでしょうか?: (S.T.)

A:

3-56 の前にある「Sol-Fa の歌い方」の説明が分かり難かったかと思います。

先ず、Reは確認しません。Do も最初以外は弾きません。
確認は任意の一区切りずつ、又は最後に楽器で確認してください。

この項では、Do を歌った後、Reをイメージする。Reを歌う。
Reを歌った後、Miをイメージする。Miを歌う。
Miを歌った後、Reをイメージする。Reを歌う。

つまり、歌った後次の音をイメージしてから歌うことがポイントとなります。

「Sol-fa の歌い方」では、歌うのを止めてから次の音をイメージして歌う、となっていますが、歌いながら次の音がイメージできれば歌うのを止めなくても構いません。
(実際のクラスでは音を止めていませんでした。)

Sol-Faを音楽教育の場以外では歌うことはないと思いますが、リズムを気にしなくていいので、ソルフェージュの言葉の機能を学ぶ上で非常に効果的です。

 

分かりやすいように書き直してみました。

Sol-Fa の歌い方

例として、次の Sol-Fa を歌う場合について説明する。

Do  Re  Mi  Fa  Mi  Re  Do

1)任意の Do を楽器で鳴らし、Do と歌って止める。

(歌いながら次の音がイメージできれば歌うのを止めなくてもよい。最初の音がDo以外の場合もDo を鳴らしてから最初の音を歌う。

2)次の音 Re を頭の中でイメージする。

3)Re を声に出して歌い止める。

4)次の音 Mi を頭の中でイメージしてから、Mi を声に出して歌い止める。

5)同様に残りの Fa  Mi  Re  Do も歌う。

6)正確に歌えたかどうかチェックするために楽器で確認する。

7)次に歌う音を上の音で歌うか、下の音で歌うかは、音が近い方、または歌いやすい方を選ぶ。

 

 

 

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スケールの発声等は録音をした後に楽器等でチェックしていく方法で宜しいでしょうか?

(2016.07.14 Face bookからのコピー)

A:
97ページにあるように、完全に歌えるスケールをスケールの途中から歌い、同じことをハミングでうたう。
次にハミングと同じ音階でDoから歌うという方法を薦めます。
例えば、ドリアンの場合は「Re , Mi , Fa , Sol , La , Ti , Do , Re 」と歌い、「ハミング」、
同じ音階で「 Do , Re , Me ,Fa , Sol , La , Te , Do」と歌います。
この方法は楽器がなくてもどこでも練習ができます。
半音が十分にコントロールできるようなら、Doから歌った後楽器でチェックするだけでいいでしょう。
録音をしてみるのもいいかもしれませんが、あまり効率的ではないように思います。

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ベースラインも移動ドでとらえるのか?

(サポート・ページからのコピー)
Q:
ピボットの項目についての質疑応答を拝見しました。
メロディだけでなくコード進行も移動Doでとらえるとのことですが、ベースラインもそのようにお考えでしょうか?

Dm7 G7のツーファイブでD A G D というラインがあったとします。移動DoでとらえるとRe La Sol Re となります。
しかしベースラインを考えるとき各コードのルート、三度、五度と認識しているので、移動Doでやるとその関係性が見えにくくなる気がしています。各コードごとに移動Doでとらえるとわかりやすいのですが、それだとコードごとに転調してしまうので忙しないです。ご意見をお聞かせください。

A:
質問は「ベースラインも移動ドでとらえるのか」ということですが、それはベースラインをどのように考えるかによって変わってくると思います。
ベースを完全なリズム楽器と考え、使う音はコード音とその経過音、というコンセプトのラインの場合は確かにそのとおりかもしれません。(この場合でも慣れてくると、Re La Sol Reは IIコードのルートとP5th、VコードのルートとP5thという感じにとらえられると思います。)

「ベースラインは音楽の最低部のメロディーラインである」とバークリーでは教えられましたが、私もそう思っています。メロディーであるから当然移動ドでとらえます。

Q:
たしかに私はベースはリズム楽器で、コード音を四分音符に配置する機械的な作業だと思っていました。
しかし最低部のメロディーラインであると考えると納得しました。

A:
ベースラインは音楽の最低部のメロディーではありますが、ベースは重要なリズム楽器としての役割もあります。また、即興演奏するときにキーの主音をDoと歌うと同時にコードのルートをDoと考える(コードの何度の音かを考える)こともするように、ベースラインにおいてもコードの何度の音かを認識することは重要です。
最初はコードのルートをDoとする考えで始め、それがメロディーとしても歌えれるようになればいいと思います。

Q:
ということはキーの主音のDo、コードの主音のDo、少なくともふたつの移動Doを同時に認識している状態であるということでしょうか?

A:
コードに関してはコードネームが分かればコードのルートをDoとする歌い方とその絶対音は分かるし変わらないので難しく考えることはないです。例えばKey of FでBbmaj7がある場合、移動ドで Fa La Do Mi ですが、コードの構成を考えた場合はDo Mi Sol Ti でもあるということです。Doからコードが歌えて、例えばBbmaj7 の Do = Bb, Mi =D, Sol =F, Ti =A を理解していれば、問題無いです。

スケールの場合も概ねコードの場合と同じに考えていいと思います。
初めはドリアンはReから歌うことから始め、それが充分に慣れた後、Doから歌う練習をしてください。
「ジャズソルフェージュ」は全てのスケールをDoから歌っていますが、これは慣れるまで時間がかかります。
Doから歌うことによって音楽理論がより理解しやすくなると思います。

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ブルースの歌い方

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Q:
ブルースはドミナントコードを基調にしていますが、これはトニックとして捉えるべきなのでしょうか。
あるいは、Iに行くV7コードとして考えるべきなのでしょうか。
それによりドレミの歌い方も自ずと変わると思いますが、いかがでしょうか?

A:
ブルースコードは、I7(トニック)とかIV7(サブドミナント)であり、それはドミナントコード(V7)ではありません。
例えば、FブルースではF7から始まっていてもそれは I7で(調はF)、FをDoと歌います。
ブルースは黒人がアフリカから持ってきたマイナーペンタトニックのメロディーとアメリカで出会ったメジャー・コードが合わさって生まれた特殊な音楽で、そういうコードが生まれました。

(追加説明)Do  Me  Fa  Sol  Te ( 1 , b3 , 4 , 5 , b7 )というマイナー・ペンタトニックのメロディーが Do , Mi , Sol ( 1 , 3 , 5 )のメジャーコード上で歌われ、Do , Mi , Sol , Te ( 1 , 3 , 5 , b7 )というセブンス・コードが生まれたと考えられています。同様にIV7は、Fa , La , Do の上にマイナー・ペンタトニックの Me が加わりました。

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知っている曲をソルフェージュで歌う

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Q:
練習時の音の感じ方について、以前にも似たようなことをお聞きしたのですが、転調や苦手な音程を歌うときがうまくいかず、キーに対するDoの響きと前の音からの度数関係を意識できた方が良いとおっしゃっていたかと思うのですが、やっぱりなかなかできず、色々と思考錯誤しているのですが、まずは歌詞で歌う時のように流れで覚えてしまってもいいのでしょうか?

例えば、良く知っている曲なら音程を意識しなくてもある程度歌えるかと思うのですが、歌詞で歌うときのような感じで流れを覚えてしまって、それを移動ドの階名で歌いこみ(この段階では単に歌詞を階名に置き換えただけで、音程は意識していない状態)、そして覚えたら各音程を細かく意識していくという方法はどう思われますか?

音程を無視して流れで歌うのはあまりよくないと思われますか?
理想を高く持って最初から全てを意識して…という意気込みでやっていたのですが負荷が高すぎてすぐに嫌になってしまいます(苦笑)。
初心者〜上級者になる過程で具体的にどのような意識、感じ方、または練習方法をしていけばいいのでしょうか?
ご自身の経験からこんな風だったというのを教えて頂ければ大変助かります。

A:
ソルフェージュの原理は、音の高さを言葉に置き換えてそれを覚え込み、そのあと言葉を歌うことで音の高さを再生する。ということなのですが、ダイアトニックな7つの音の間の上行のインターバルだけでもことば(ソルフェージュ)との関係は40ほどになります。臨時記号が入った12音ソルフェージュでは、フラット系とシャープ系、更に下行も入れると大変な数になります。これらを全て数年でマスターするのは相当な努力が必要です。

苦手な音程とはあまり使わない音程だと思います。使っていない音程はあまり練習していないということなので困難なのは当然です。転調はかなり難しいです。 しかし、よく出てくるインターバルや Me とか Te のソルフェージュは結構早く歌えるようになったのではないかと思います。

よく知っている曲を音程を意識せずに階名で歌うということですが、基本的にはそれでいいと思います。しかし、練習の基本である「ゆっくりから始める」場合は、意識もできると思います。私が思う意識とは、前の音とのインターバルが何度とかいうことではなく(最初はそれも必要だが、慣れてくると何と何の間のインターバルは何度かということは覚えてしまう)、何の音からスタートしているとか、どの音からどの音に向かっているとかのメロディーの構造のことです。「ソルフェージュで歌うことはメロディーをアナライズしていることになる。」ということを言っています。

私の場合、曲を練習する時は知っている曲も全てソルフェージュで歌って覚えることからスタートします。その時改めてメロディーの構造で新しい発見をすることがよくあります。知っている曲をソルフェージュで歌い直すことで、効率よくいろいろなインターバルを歌い込むことができ、曲も正確に覚えられます。

ソルフェージュを始めて、効果を感じているという報告を少しずつ頂いています。
半年されて効果を感じておられるなら、後はあまり焦らずに数をこなすことだと思います。あるとき今までできなかったことが急にできるようになっている、そういう自分を発見した時の喜びをたくさん経験してください。

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「転調を歌う」ーAll the things you are のアナライズ

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Q:
今日から転調の項をやり始めました。
103ページのAll the things you areについてですが、5小節目からのDbmaj7-Dm7-G7というところで転調はDm7のところから始まっていると思うのですが、ソルフェージュは2拍先行してDbmajの3拍目から転調先のキーで歌っていますが、先行しているのはなぜでしょうか?

他の曲でもメロディーが休符なしで続いてる場合は転調先を先行して歌うのでしょうか?
また、21小節目のGの関係マイナーであるEmに・・・という説明がよくわからなかったのですが・・・
こちらの本ではマイナーに転調した場合にはマイナーキーのⅠの音をDoとして(この場合EをDo)読む方法を勧めていたかと思うのですが、ここではGをDoで歌うのはなぜでしょうか?

最期に前回の質問で曲をソルフェージュで覚えるとおっしゃていたかと思うのですが、コード進行もソルフェージュで覚えるのでしょうか?
その場合はどのように覚えるのでしょうか?
まずはルートをソルフェージュで追って、ルートをDoとして歌うチャプター6の方法で覚えるという方法ですか?

A:
最初の転調はジャズに多いピボット・コードPivot chordを使った転調です。ピボット・コードとは元のキーと新しいキー共通のコードで、2つの機能をもっています。ここのDbmaj7 はピボット・コードで、 Abキー(以下(Ab:)と略します)のIVmaj7と (C:)の bIImaj7の2つの機能をもっています。

( bIImaj7 は、ナポリタン・コードといわれるもので、18世紀のイタリアのオペラの作曲家が好んで使いました。ドミナントコードの前に置いて終止形を華やかにする効果があります。ジャズでは bIImaj7 – II-7 – V7 という形で多く見られます。)

9小節目の C-7 もPivot chord です。Cmaj7 がモードが変わって C-7 ( I-7 )になり、次の(Eb:)のVI-7 という2つの機能をもっています。

F#-7(b5) – B7 – Emaj7 – C+7 – F-7 の項は (E:)に転調したとも考えられますが、B7まではマイナーコードに向かうII-7 – V7 なので E-7に向かおうとしてた訳ですね。E-7は (G:)のVI-7なので、ここは転調していないと考えることもできます。E-7はピカルディーの3度Picardy 3rdでメジャーに変わったと考えられます。

(Picardy 3rd とはクラシック音楽の伝統で、マイナー・キーの曲が最後にメジャーで終わることをいいます。Cole Porterが好んで使っています。例:What is this thing called love? ジャズではそのイミテーションでマイナー・コードがメジャー・コードに変わることもあります。)

ここで E-7 が Emaj7 に変わったのは、モードを変える以外に大きな意図があります。それは(G:)から(Ab:)への転調をスムースに移行させるためだったと考えられます。ボイス・リーディングVoice Leadingを使った転調で巧妙にできています。
Emaj7 – C+7 – F-7 の構成音は (E G# B D# ) – (C E G# Bb ) – (F Ab C Eb ) で、G# – G# – Ab は同じ音で3つのコードの共通音です。それぞれの M3rd、+5th , m3 です。これでEmaj7になった理由、C+7の理由がわかると思います。更に隣同士のコードとはもうひとつ共通音があります。

実際のところは、元の形である(G:)のVI-7から(Ab:)のVI-7につなぐとき、F-7に向かうセカンダリー・ドミナントのC7を通常置きますが、E-7 – C7 – F-7 は良くないですね(直接的な転調ではありえますが、転調感をできるだけなくしたい)。それで E-7の3度と7度を上げて(Picardy 3rd)F-7に近づけた。C7の5度も上げて、3つのコードの共通音をF-7の重要な音である3度につなげた、といったところだと思います。

ジャズ進行はほとんどが4度進行なので、私は Ti Mi La Re Sol Do Fa と、コード進行もよくソルフェージュで覚えます。 それで4度進行以外のところは理論で覚えます。
この曲の場合は、La Re Sol Do Fa=Ra Re Sol Do=La Re Sol Do Fa ———-という感じです。
ダイアトニック4thサイクルなので、そのままLa=VI-7 Re=II-7 —–なので分かりやすいです。
この曲は頻繁に転調しているのにあまり違和感がありません。それはピボット・コードなどを使って転調箇所をきれいにつないでいるからです。

Q:
24小節目のC7+の表記についてですが、C7b13と構成音が同じだと
思うのですが、C7b13ではなく、C7+と表記しているのは何か理由がありますか?

A:
C7(b13)とした譜面も見たことがあるような気がします。C7(b13)の(b13)は上位構造のテンションであり、コード音としては完全5度の音も含まれます。一方、C+7の +5thの音はコード音で、完全5度の音は含まれません。C+7とすることで、3つのコードをつなぐという明確なVoice Leadの意図がみられます。