転調とソルフェージュ

ジャズ曲では転調が多く、移動ドのソルフェージュで歌うには難しいと思われるかもしれない。しかし、転調は近親調への転調がほとんどで、多くの場合、歌い替えしないでそのまま歌うことができる。12音ソルフェージュで歌うことにより、どの調に転調したか、またはどのモードに変わったかがダイレクトに分かる。歌い替えが必要な場合は、歌い替えが容易なように作られている場合が多い。

共通音の多い調のことを近親調というが、近親調に転調した場合は転調感が少なく転調先として好んで使われる。近親調には次のような種類がある。

①属調(Cキーの場合(以下同様)Gキー) ②下属調(Fキー) ③平行調(Amキー) ④同主調(Cmキー) ⑤属調の平行調(Emキー)⑥下属調の平行調(Dmキー)

日本の和声では、近親調への動きはすべて転調として扱われるが、バークリーではそうではない。バークリーではTraditional harmonyとして、クラシックの理論クラスもあるが、そこで使われているのは有名な” Tonal Harmony ” (Stefan Kostka著)という700ページに及ぶ音楽理論書である。表記方法や考え方はバークリー理論にも多く取り入れられているが、その中での転調(Modulation)についての記述。

Because parallel keys share the same tonic, we do not use the term modulation when talking about movement from one key to its parallel. The term change of mode, or mode mixture, is used instead.

Parallel key(同主調)へ移行する場合は転調(modulation)とは呼ばないで、モードの変化(Change of mode)という言葉を使う、とある。       Mode mixtureという言葉は Borrowed chord(借用コード)、ジャズにおけるModal interchange chordを示している。

同主調(Parallel key)の場合は転調としないので、近親調への転調は次のようになる。

近親調に転調した場合のソルフェージュについて考えてみる。

① 属調(Dominant)に転調した場合

ジャズソルフェージュ2では、バッハのメヌエットを始めガーシュインの曲に多くの例を挙げている。ほとんど B section(ブリッジ)の部分に見られる。
移動ドで歌い替えしないで歌った場合、ソルフェージュの Fi(ファ#)が必ず出てくる。Fi が出てきたら属調に転調したか、Lydian からのモーダルインターチェンジと考えていいが、アプローチノートとしてのFi との鑑別が必要。当サイト、Stella by starlight アナライズI rember you アナライズ にも例がある。

② 下属調(Subdominant)に転調した場合

サブドミナント・コードはトニックと同じコードタイプ(Cmaj7 →Fmaj7 / Cm7→Fm7)なので、IVコードなのか、転調して I コードなのか区別がつかない場合が多い。
メロディーとコードが同時に転調していて、ある程度の長さがあれば完全に転調と考えるが、そのような例は少なく、ほとんどの例で歌い替えしないでソルフェージュを歌うことができる。
移動ドで歌い替えしないで歌った場合、ソルフェージュの Te(シ♭)が必ず出てくる。Te が出てきたら下属調に転調したか、Mixolydian からのモーダルインターチェンジが考えられるが、転調していない場合もあるので無理に歌い替えする必要はない。アプローチノートとしてのTe との鑑別も必要。

③ 平行調(Relative key)に転調した場合

CとAmのような同じ調号を持ったRelative keyに転調することはよくある。特にマイナー・キーにNatural minorが使われた部分はどちらか区別がつき難い。
また、頻繁に両キー間で変わる場合もあり、全体を通してどちらかのキーで歌った方がいい。通常はメージャー・キーで歌うのが歌いやすい。メジャー・キーで移動ドで歌い替えしないで歌った場合、マイナー・キーの部分はLa-based minor で歌うことになる。

④ 同主調(Parallel key)に転調した場合

先に述べたように、CキーがCmキーに変わっても転調とは考えない。C Ionian(Major) が C Aeolian(minor)にモードが変わっただけなので、いずれもソルフェージュは C を Do と歌う。Do-based minor で歌うことの効果が最も発揮される場面である。
マイナー・キーでは、伝統的に最後がメジャー・コードで終わることがある。いわゆるPicardy の3度であるが、メジャー・キーのIIIm7やIIm7 のマイナー・コードもメジャー・コードに変わることがある。モーダルインターチェンジの一種と捉えられるが、部分的にモードが変わっただけなので、そのまま歌えばいい。当サイト、I rember you アナライズAll the things you are アナライズにも例がある。

⑤、⑥ 属調または下属調の平行調

上記同様、通常は歌い替えしないでそのまま歌う。
例として、Yardbird suite(C:)のB sectionのEm は属調の平行調で、そのままソルフェージュで歌うと Fi と歌うことになり、それと分かる。B section の後半にDm となるが、下属調の平行調とするには曖昧である。興味深いことに、当サイト Dindi アナライズ にあるように、Dindi のB section でははっきりとDm と Em に転調させている。このDm とEm は同じメロディーなので、この場合は歌い替えした方が容易い。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください