Q: ツーファイブなどの部分転調と言われいる部分の歌い方はどのようにすればいいのでしょうか?
たとえば、moment’s noticeの冒頭2小節のEm7-A7はキーをツーファイブの解決先であろうDmajとしてReをドと読んで進めていくのでしょうか?それとも曲のキーであるEbmajであるEbをドとして読んでいくのでしょうか?
どちらにせよ前者であればツーファイブ上での音の役割は理解しやすそうですが頻繁に転調していくので頭を切り替えていくのが大変な気がしますし、後者は読み方は楽ですがツーファイブ上での役割というのは階名からは見えてこない気がします。もしくはまだ理解できていない部分が多いのですがモードの切り替えをすればうまく解決出来るのでしょうか?またセカンダリドミナントやダブルドミナント、エクステンデッドドミナントなどの本来のキーから離れていった時にどのように対応すればよいのかが、わかりません。長くなりましたが結局のところキーから外れたツーファイブ部分をどう歌えばいいのかがわからないのだと思います。基本的な事だとは思うのですが何とぞ回答のほどよろしくお願い致します。
A: この問題はセカンダリー・ドミナント等をどのように理解するかということにあります。
これを「部分転調」とするという考え方が日本にあることは知っています。部分転調を転調と考えると、確かにご指摘のような問題が起きてきます。
クラシックの有名な音楽理論書「Tonal Harmony」や Berklee ではセカンダリー・ドミナント等は転調とは考えません。
ここで詳しい説明はできませんが、メロディーの場合は Cキーで他のキーで出てくるC#やBbの音が使われていても必ずしも転調にはならないですよね。
コードでも同じことが起きていると思ってください。
これはセカンダリー・ドミナント コードとは何か、ということを理解すれば分かることですが、クロマチック・テンデンシー にヒントがあります。
ダイアトニック・コード以外のコードが使われた時はそのキーを保持するようなコードスケールを使い、できるだけトーナルセンターを保持するようにします。このコードスケールは難しいものではなく、コード トーン以外の音をそのキーの音にすればいいだけです。(ドミナントは不安定ですぐに解決するので、オプションとしていろいろなドミナントスケールが可能です)
Moment’s Notice ですが、アナライズで書いているように、この曲は一度も転調していないと考えています。
従って、この曲のContiguous II-V 部分においてもメロディーに同じ音を使っており、Ebを Do として全体を歌うことができます。
(メロディーとコードが同時に動くContiguous II-V を使った曲では転調と同じ歌い方が必要になります。)
エクステンデッド・ドミナントやエクステンデッド II – V では、メロディーが一緒に動いている場合は転調として歌う必要があります。しかし、同じメロディーなので難しくはありません。同じエクステンデッド・ドミナントでも例えばビバップ・ブルースの例では転調とはならないです。
日本語の音楽用語は紛らわしいものが多いですが、部分転調もその一つでしょう。実際に部分的な転調と考えられていたのかもしれませんが、部分転調は転調と考えない方がいいと思います。転調と考えると難しくなるだけでなく、トーナルセンターの保持も難しくなります。