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Tendency Tones(続)

前回、ダイアトニックなTendency tone について書いたが、今回はマイナーやモード、クロマチックなTendency についても言及したい。

コード進行を理解するにあたって、何故それが起きるかを理解することは重要であるが、Tendencyは和声の動き、コード進行と密接な関係にある。

歴史的に最初はリズムとメロディーのみ存在し、ハーモニーはなかった。ハーモニーは複数のメロディーが同時に起きたものと考えられるため、調性の中でのメロディー音の動きの特性(tendency)を知ることはハーモニーの動きを知ることでもある。

 

メジャー・スケールにおけるテンデンシー

Tonic(1度):最も安定していて、Tonic以外のスケール音は最終的にTonic に向かう。

Dominant(5度):安定している。( Dominant chord のことではない)

Mediant(3度):比較的安定していて、いくつかの音はこの音に向かう。

Supertonic(2度):通常2度はトニックに、スケールで動くときは二次的に3度に動く。

Subdominant(4度):強いTendencyで半音下の3度に、またはスケールで上の安定した5度に動く。

Submediant(6度):通常5度に向かうが、二次的に、より不安定な7度に向かう。

Leading tone(7度):強いTendencyで半音上のTonic に動く。

 

マイナーにおけるテンデンシー

マイナーやモードにおけるTendency も安定した音(1,3,5)と不安定な音(2,4,6,7)に分けて同様のTendency が考えられる。

C Aeolian ( Natural minor ) の7度をみるとtonicの全音下の音になっている。この7度はSubtonicといわれ、Leading tone ほどの強いTendency はない。7度をLeading tone に変えたスケールがハーモニック・マイナーである。

また、ドミナント(5度)の位置にできるコードはマイナー7thコードで、メジャーのときのようなトライトーンがなく安定している。ハーモニック・マイナーでは V7 となりトライトーンを有する。この場合のテンションは b9 となり、マイナーで b9 が使われる所以である。

 

モードにおけるテンデンシー

モードにおけるTendency もトニック・トライアド(1,3,5)と、それ以外の音(2,4,6,7)に分けて同様のTendency が考えられる。ドリアンだけ示したが、それ以外のモードも同様である。
この場合のトニック・トライアドは( D , F , A )であるが、これをRe, Fa , La と歌うか、Do , Me , Sol と歌うかという選択がある。後者はトニック・トライアドがダイレクトに認識できる点で優位と考える。また、モードの種類が特定できていなくてもトニックが分かれば歌い始めることができる。

 

クロマチック・テンデンシー

半音下または半音上に向かうChromatic tendency は secondary dominant を理解するのに役立つ。

 

メロディーを移動ド で、また、どのモードであってもトニックをDo とソルフェージュで歌うことで、より音楽が理解できるようになる。多分、「そうしなくても私はできるよ」という人はいる。感覚的にできてしまう人はいる。しかし、作曲をしたり、より上を目指すなら挑戦する価値はあると思う。

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Solfege Major Licks 音源

Jazz Lick

Lickとはジャズ用語で短いフレーズ、会話で言えば単語や熟語に相当する。話の上手い人はボキャブラリーが豊富であるのと同様に、熟練したジャズプレーヤーはフレーズの引き出しが多い。

しかしながら、多くのフレーズを持っていればいいプレイができるとは限らない。よく喋る人が必ずしもうまい話し手ではないのと同じで、その質も重要である。

Lickの意味(構造やそこから得る雰囲気)を知って適切な場所で使われることは重要だが、ジャズの場合は特に個性が需要視される。スピーチでも個性的な喋り方をする人はもてはやされる傾向にある。1) 多くのLickが引き出しにある。2) そのLickを理解する。3)自分独自のLickを集める。ということを考える必要がある。

自分独自のLickを集めるには、CDや楽譜などから気に入ったフレーズを取り出し、どの機能(トニック、ドミナント、etc.)のフレーズとして使えるか考えるといい。

「ジャズソルフェージュ2」では、更にそれらのフレーズを発展(develop)させて何倍にも活用する方法を載せている。

Solfege Licks 音源

以前「ジャズソルフェージュ」読者から、Lickをソルフェージュで歌った音源の要望があった。それには ” 3)自分独自のLickを集める ” という考え方から、消極的な回答をしたのだが、今回、集めていたLick を使って実験的にソルフェージュで歌ったLick集を作ってみた。

音源はソルフェージュでLick を聴くだけでなく、自分の楽器でそれを再現して練習するようにした。Lickは、組み合わせて更に別のLick にもなるように、1小節以内の短いフレーズとした。

音源を作り、実際に練習として実践してみると、これはLickを覚えるだけではなく、ジャズの練習方法として非常に効率の高い練習となると感じた。

その想定外の効果について考えてみた。

バリー・ハリスのワークショップ

音楽をするときに一番役に立つツールは何かと聞かれたら、何と答えますか?

それは楽譜ではないでしょうか。記録方法としてだけではなく、理論を考えたり、学んだりと無くてはならないもの。

では、音楽をするときに一番弊害となるツールは何かと聞かれたら、何を考えますか?

やはり、それも楽譜だと思う。実際に楽譜を見ないで演奏すると音が良くなることが多い。その理由は演奏者が、楽譜を見ているときよりも、より聴くことに集中できるからであろう。

20年以上前のことになるが、ニューヨークのバリー・ハリスのワークショップに1度だけ参加したことがある。そこでは、耳で聴いて真似をする、という楽譜は一切使われないレッスン。バリー・ハリスの提示したフレーズを生徒がピアノで順番に弾くという方式であった。楽譜がないので、みんな小さなカセット・レコーダーを持って参加していた。

バリー・ハリスは間違いなくジャズ史に残る巨匠である。このワークショップは有名だったので、メソッドとしては評価されるものだと思う。しかし、彼のドゥヴァドゥバ・・・というスキャットのメロディーを聴いて楽器で再現するのは上級者レベルでないと難しい。

ビバップの優れた教材と言われている「The Barry Harris Workshop Video」というのがある。この中でも楽譜は使わずに、生徒は自分の楽器でスキャットに続いて真似ている。しかも、すごく早いテンポで長いフレーズ。

この教材には楽譜が付いているが、それで練習するのは彼のレッスンの主義に反する。しかし、ビデオだけでは難しすぎる。生徒は予め練習しているのであろうが、かなりの上級者である。彼の英語は聞取り難いし、楽譜だけが参考になった。

もし、この教材がスキャットでなく、12音の移動ド ソルフェージュでゆっくりと歌われていたら、ジャズ初心者から使えるものになっていたであろう。

Solfege Jazz Licks 音源

テンポ  「練習は遅いテンポから始めるようにする」、と多くの音楽教育者が言っている。そのテンポは極端に遅いので、かえって難しいときもあるが、通常のテンポで間違いながら練習すると、間違いが練習として身体が覚えてしまう。

この練習ではtempo=60から始めている。このテンポなら運指やインターバル、その他いろいろ考えながら練習できる。12キーの練習でも間違うことなくプレイできると思う。これができればtempo=120も簡単にできるはず。この方法は、はじめからtempo=120で間違いながら練習するより確実に早く習得できる。

ソルフェージュの音源  12キーでも聞き取りやすいように、低音域キーは男声で高音域は女声を使っている。

いずれもアメリカのネイティブな発音で、少しスウイングさせている。よって、ソルフェージュの発声をそのまま楽器で表現することで、ジャズ・リズムの練習にもなっているように思う。

ドラムスのリズムは1拍3連のsubdivisionがよく感じられるものとなっている。

楽譜を使わない  この練習の最大の特徴は楽譜を使わないことにある。バリー・ハリスのワークショップの項でも触れたように、耳で聴いてそれを真似する、という練習の意味は大きい。しかも、この場合の元の音源はソルフェージュなので、それを聴いた時点で楽譜上の音符がイメージされる。更にはソルフェージュなのでメロディーの解析までができてしまう。短いフレーズでテンポが遅いので、初めてのフレーズでも間違えることは非常に少ない。楽譜を見ないので運指その他を考える余裕ができる。

これがこの音源最大の想定外の効果で、Lickを覚えるという最初の目的の方が副産物に思えてくる。

独自のLickの習得  ” 皆が同じフレーズを弾いたら恐い” 、最初はこの危惧があったが、しかし、実際に練習してみて、Lickの数が多いのとフレーズを断片的なものに限定してあるので、皆が同じフレーズをプレイするという心配はあまりないと感じた。

実際にはこの音源は、宣伝にも関わらず、生徒を除くと現時点で5名ほどにしか出てないので要らぬ危惧であろう。

最初のLickはMajor Lickから始めたが、これはトニック(I コード)を想定している。(4番目の音( Fa , Fi )はアプローチ・ノートとして使っている。)

次は、ドミナントLickを作りMajor Lickと併せての練習、その次がサブドミナントLickでドミナントへ続く練習、そしてマイナーのLickと続ける予定であるが、最後まで続けられるか、乞うご期待。

ダウンロード  この音源はダウンロードできる(有料:200円〜)ようになっているので興味がある人はUNOJAZZ.BASE.SHOPへ。

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Sol-Faの歌い方について

読者の質問から

Q:

p44のsol-faを歌うについて疑問があるのですが、

「ジャズソルフェージュ」44ページ

3-56   do re mi re …

とあるとすれば、reを確認したあとに一旦またdoを弾いてからmiについて同じことをするのでしょうか?それともreを確認したあとにdoにはもどらずmiをイメージして同じことをするのでしょうか?: (S.T.)

A:

3-56 の前にある「Sol-Fa の歌い方」の説明が分かり難かったかと思います。

先ず、Reは確認しません。Do も最初以外は弾きません。
確認は任意の一区切りずつ、又は最後に楽器で確認してください。

この項では、Do を歌った後、Reをイメージする。Reを歌う。
Reを歌った後、Miをイメージする。Miを歌う。
Miを歌った後、Reをイメージする。Reを歌う。

つまり、歌った後次の音をイメージしてから歌うことがポイントとなります。

「Sol-fa の歌い方」では、歌うのを止めてから次の音をイメージして歌う、となっていますが、歌いながら次の音がイメージできれば歌うのを止めなくても構いません。
(実際のクラスでは音を止めていませんでした。)

Sol-Faを音楽教育の場以外では歌うことはないと思いますが、リズムを気にしなくていいので、ソルフェージュの言葉の機能を学ぶ上で非常に効果的です。

 

分かりやすいように書き直してみました。

Sol-Fa の歌い方

例として、次の Sol-Fa を歌う場合について説明する。

Do  Re  Mi  Fa  Mi  Re  Do

1)任意の Do を楽器で鳴らし、Do と歌って止める。

(歌いながら次の音がイメージできれば歌うのを止めなくてもよい。最初の音がDo以外の場合もDo を鳴らしてから最初の音を歌う。

2)次の音 Re を頭の中でイメージする。

3)Re を声に出して歌い止める。

4)次の音 Mi を頭の中でイメージしてから、Mi を声に出して歌い止める。

5)同様に残りの Fa  Mi  Re  Do も歌う。

6)正確に歌えたかどうかチェックするために楽器で確認する。

7)次に歌う音を上の音で歌うか、下の音で歌うかは、音が近い方、または歌いやすい方を選ぶ。

 

 

 

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Tendency Tones(テンデンシー・トーン)

ソルフェージュで歌う場合に知っておいたほうがいいという事項に Tendency Tone があります。Tendency とは「傾向」とか「性質」という意味で、音には向かう方向があるということです。

①トニック・トライアド(Tonic triad、つまりDo , Mi , Sol)以外の音は、隣のトニック・トライアドの音に解決しようとします。しかし、それには方向があり、例えばReはMiではなくDoに向かうtendencyが、Ti は導音と呼ばれDoに向かうtendencyがあります。

②トニック・トライアド(Mi , Sol)の音は、直接、またはスケールでトニック(Do)に向かうtendencyがあります。

メジャー・キーにおけるダイアトニックなTendencyは、

これらTendency toneパターンの認識はトニックを同定する時に役立つ。また、知識として知っていることは作曲やソロのときの音の選び方の重要な要素となります。

このような音のTendencyな動きは、子供の歌とかシンプルな曲によくみられます。

マイナーやモードにおけるTendency やクロマチックなTendencyは次回に続けたいと思う。

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指揮をしながら歌うということ

バークリーのイヤー・トレーニングでは、リズムもメロディーも口で歌いますが、その時必ず自分で指揮をしながら歌うことが最初から要求されます。その様子は

https://www.youtube.com/watch?v=0FvX0ENSyPk

で見ることができます。

画像では分かり難いですが、この指揮法は1拍をダウン・ビートとアップ・ビートに分けたものになっていて、いわゆるサブディヴィジョンSubdivisionを意識したものです。

指揮をしながら歌うことの目的や効果ですが、はっきりしたことが言えないため最初の刊では載せませんでした。バークリーのイヤー・トレーニング部門は大きな部門であり、そこで長年の試行錯誤の結果行われていることなので大きな意味があるに違いません。

著者が「ジャズ・ソルフェージュ」を書けたのは、著者自身が音感が悪くて何十年音楽をやっていても改善されなかったものがソルフェージュに出会い救われたことによります。しかし、リズムに関しては何とかできるようになっていたので ”指揮をしながら歌う” ことの効果が実感できずにいました。しかし、著者も昔はリズムが取れなくて苦労しました。その時このやり方で練習していたら楽にできたかもしれません。確かにこの方法だと難しい裏拍の連続したリズムも簡単にできると思います。

そのような著者が考える ”指揮をしながら歌う” ことの意味は次の様になります。

1)表拍と裏拍の区別がしやすい

2)視覚的にも何拍目の表か裏かがわかる

3)休符がよく意識できるようになる

4)指揮が上手くなる

この指揮法については「ソルフェージュ2」に載せています。

リズムが苦手な人も得意な人も是非試して見て下さい。大きな効果を実感された場合はレポートを頂けたら嬉しいです。

 

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短調を「ド」から読むか「ラ」から読むか?

短調を移動ドで読む場合、基準音(トニック)を「ド」から読むか「ラ」から読むか、という問題は議論があり、日本では「ラ」から読むことが多いようです。しかしながら、バークリーでは「ド」から読む方法を採用しています。

Do-based minor について

移動ド唱法でのマイナー・キーの歌い方には、ラから歌う方法(La-based minor) とドから歌う方法(Do-based minor)があります。バークリーや「ジャズソルフェージュ」では Do-based minor を使っています。更に、通常のマイナー・キーだけでなく、全てのモード曲についても Do-based minor(またはmajor) を使っています。

通常のマイナーやドリアンを「ラ」や「レ」から歌うのは簡単ですが、全てのモードを「ド」から歌うのは少しだけ訓練が必要です。しかし、一度マスターしてしまえば、その効果は絶大です。メロディーや和声の分析が非常に容易になります。 特にモード的手法が入ったコンテンポラリーな曲で Do-based minor( or major)は効果的です。

La-based minor について

「ラ」から読むことの利点は、メジャー・キーが歌えれば容易に歌えることです。他にナチュラル・マイナーで書かれている曲(例Summer time)が7音だけのソルフェージュで歌えることなどもありますが、ジャズでは稀な例です。
「ラ」から読むことのもう一つの利点は、Relative key(平行調 / Am→Cのように調号が同じキー)に転調する場合です。反対にParallel key(同主調 / F→Fmのようにトニック音が同じ場合)は圧倒的に Do-based minor が有利です。

モード曲における歌い方

Do-based minor(またはmajor) で歌う場合は、どのモードであっても Do から歌います。従って何のモードか分からなくても歌い始めることができます。例えば、Me , La , Te のソルフェージュが含まれれば、これはドリアンだと認識します。ドリアンは Re から始まるモードではあるが、Do から歌うと3度と7度のみが♭するモードと覚えているからです。 Do-based Dorianとか Do-based Lydianとか表現したほうがいいかもしれません。Do から歌う場合は、常にトニックは Do で、2度は R (Re or Ra)、 3度は M (Mi or Me)、. . . . . . . . となります。

La-based minorと同じ方式で歌う場合は、それぞれ Re-based Dorian、Mi-based Phrygian、Fa-based Lydian、. . . . . . . . などとなり、モード毎にソルフェージュの基準音が変わります。ドリアンは Re から歌うので Dドリアンが一番読みやすいですね。しかし、CドリアンはBbキーと思って歌う必要があります。
この場合、モードが変わる曲を歌うのは大変です。部分的にモードが使われているジャズ曲は結構あります。
全てのスケールをドから歌うことで、スケールやモードの比較が容易になり、理解しやすくなります。

Do-based minorはアドバンスな唱法といえます。マイナーは「ラ」から、ドリアンは「レ」からといった唱法をマスターしてから挑戦するといいでしょう。新しい世界が見えてくると思います。私の場合、昔「ラ」から読みで覚えた曲やメジャー曲で途中 Relative minorになる場合のマイナー部分、Dドリアンなどは無理に「ド」から読みをしないことが多いですが、最近は、どのような場合でもドから歌ったほうがイメージが膨らみやすいように感じます。

ジャズの元となったブルースは、黒人がアフリカからもってきたマイナー・メロディーとアメリカで強制的に入れられたプロテスタント教会のメジャーな和声とが融合して生まれました。従って、メジャー・キーのジャズであっても、マイナーなメロディーが使われたり、マイナー・キーからの和音が借用されたりするのは普通のことです。マイナーで始まり、メジャーで終わる曲も多い。メジャー・キーの場合は元々ドから歌うので問題ないのですが、例えば Fマイナー・ブルースでは、メロディーは Fブルースの場合とほとんど同じです。それを ラから読むとその関係が分からなくなります。Do-based minor を使うことで、いろいろな関係がよく理解できるようになります。

追記(2020.4.19)

ソルフェージュで歌う場合、Do-based minor には加えて重要な利点があります。それはソルフェージュの言葉のテンデンシー(Tendency) に関係しています。
分かりやすいドリアンで説明すると、例えば D Dorian をRe から歌うのは簡単ですが 、その場合(Re-based Dorian)の Re, La, Fa はトニックの構成音でメロディーはこれらの音に向かいます。しかし、メジャー・キーの移動ドに習熟してくると、これらの音はそれぞれ Do, Sol, Mi または上行して Mi, Ti, Sol に向かうTendency を感じてしまいます。
Do-based minor(mode) でのソルフェージュは常に、例えば Fa は Miや Me に、または上行してSol に向かうTendency が働きます。

Do-based minor(mode) で歌うことで、メロディーの度数が分かるだけでなく、自然なメロディーが期待できます。

* Tendency については、別に説明があります。

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ソルフェージュの挫折とその対策

 

1.始める前から挫折している場合

1)移動ドを練習しようかどうか迷っていて初められない。
2)固定ドに慣れてしまっていて抵抗感が半端でない。
3)譜面を見ながら演奏するのでソルフェージュが歌えなくても問題ない。

(対策)

1) どちらにすべきか迷った時は、今ではなく慣れた時にどちらが良いか考えます。
12音移動ドをマスターするには、人によっては何年もかかるかもしれません。それに慣れた時にどのようなメリットがあるか、それが自分にどのように役に立つか現状と比較してください。

2) 固定ドに慣れている場合は初めは混乱が生じるかもしれませんが、乗り越えることは絶体にできます。マスターしたならあなたは新しいレベルに到達することは間違いありません。

3) 楽譜を見ながら演奏することに慣れてくると一種の条件反射で演奏するようになって、頭で考えるということがあまり必要なくなってきます。楽に演奏できるようになります。
譜面がなくても人前で演奏したり、即興演奏や作曲をしたいと一生思わないなら移動ド(相対音感)は必要ないかもしれません。しかし、そのような場合でも演奏する曲を理解するためには移動ドは便利なツールです。

2.第1章「メジャー・スケールを歌う」で挫折した場合

この章でのポイントは、①いかに半音の音程を正確に歌うかということ、②トニックのドを最後まで意識しながら歌う、ということです。
あまりに簡単な練習なのでテンポが早かったり、雑に歌ってしまう傾向があります。

① MiとFa、TiとDoの半音箇所が実際の音程より広くなりがちです。特に半音を意識してゆっくりと歌ってください。
② 小さくDoを楽器で鳴らしながら歌う練習も効果があります。
各音間のインターバルだけを意識した場合は、少しでも高め低めに歌うと最後は大きくピッチがずれることになるので常にトーナルセンターとしてのDoを意識してください。
鳴らすDoは自分の音域よりも低い音域で鳴らし、自分のソルフェージュとのハーモニーを感じるように。

いつも発声練習をしてから初めてください。
特に裏声の練習は効果があります。
ソルフェージュの発音よりも、ピッチの正確さ( Intonation )を重視してください。
音はできるだけ伸ばしてください。
ソルフェージュ・サポートページに練習用音源があります。それを聞いてソルフェージュの言葉で出てくれば練習の成果があったと考えられます。
第1章がしっかりできれば、次章はそんなに難しくありません。

Try again!

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絶対音感のピアニスト

(ジャズソルフェージュFaceBook2016/12/26投稿)

 

子供の時からクラシックピアノを習っていて、大人になってからジャズを始める絶対音感を持ったピアニストは多い。その場合の移動ド・ソルフェージュについて最近考える。自分に絶対音感がないので、直接聞くしかない。

彼らに共通している傾向は、固定ド唱法を使っているので、移動ドに対する違和感が大きい。知っている曲が別のキーで演奏されると気持ちが悪い。音の聞き取りが簡単にできる。訓練しているので、移動ドを使わなくても移調もできる。楽譜が目の前に無いと不安。何も今更、移動ドを練習して相対音感を身につける必要がない。というような人が多いと思う。

移動ドが嫌いな人には何人か会ったが、絶対音感も相対音感もどちらも身につけた人もいる。理想的である。

ジャズであっても、絶対音感だけのプロ・ピアニストもいるようだし、彼らには移動ドは必要ないのか? いや、彼らが移動ドも身につけたら、すごいことになる。

時折、絶対音感だけの人は音楽の聴こえ方、感じ方が相対音感だけの人と違っているのでは、と思うことがある。

クラシックの世界では、歴代の大作曲家の中に相対音感のない人はいない。しかし、絶対音感のない人は何人もいたということだが、演奏家はどうなんだろう?

クラシックの演奏は何に忠実であるべきか?と考えた時、一つの答えは作曲家の意図や意思に忠実というのがある。その場合、聴こえ方が違うのであれば、相対音感の作曲家の曲が絶対音感の演奏家で忠実に再現できるのだろうか?
ジャズにおいても、絶対音感だけの演奏者の音楽は、絶対音感のない聴衆や共演者に正しく伝わるのだろうか?

The answer is blowin’ in the wind.

移動ド・ソルフェージュを宣伝するため書いてみた。
コメントがもらえたらうれしいです。

R.U.

絶対音感」と言うので何か凄く特別感がありますが、音の絶対値がわかる能力で、左利きをぎっちょと言うのと同じです。

僕は絶対音感ですが、相対音感も身につけました。

甲陽ではもちろん相対音感で教えています。
生徒の中にはヤマハなどで固定ド唱法を叩き込まれて
「できませーん」
と言われますが、自分を例にして、移動ドは後からでも身につくし、できないと言うのは思い込みによる部分が大きいと感じます。

絶対音感は感覚的なものですが、相対音感は理論的かと思います!

A:
そうですね。できないというのは思い込みの面もあるでしょうね。
絶対音感があっても固定ド唱法さえやっていなかったら移動ドはもっと抵抗なく受け入れられると思うのですが。Aをラではなくミと言ったりするのが気持ち悪いらしいです。
I.U.
 貴著を購入させていただいて、現在、移動ド・ソルフェージュに少しずつ慣れていっているところです。
これまで固定ド以外の読み方を考えたことすらありませんでした。楽器はギターなので、移動ドの方が理解しやすく感じ、また絶対音感も持ち合わせていないので、移動ド・ソルフェージュのメソッドは自分向きかなと思います。
まだまだ初心者ですので、時間をかけてゆっくり理解し、マスターしていきたいです。
A:
ソルフェージュは使っていると段々と面白くなっていきますよ。続けることが一番大切です。
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錯聴と音楽 / ソルフェージュでは何故、声に出して歌うか

錯聴と音楽

錯視とは実際とは違って見えることだが、これは生きるために長い間かかって獲得してきた脳の能力の裏返しといえる。
視野検査というのがあって、仕事で関わったことがある。視野が欠けていないかをみる検査だが、正常な検査結果でも必ず見えていない部分がある。視神経が一箇所に集まる部分、盲点である。脳はこの部分を脳内処理で補っている。脳は網膜に映った平面画像をも脳内処理で立体画像にしている。目からの情報が大きなエネルギーを消耗する所以でもある。

錯視ほど認知はないが、錯聴という現象も報告されている。
パーティーなどで、どんなに周りがうるさくても相手のことが聞き取れる「カクテルパーティー現象」は錯聴の典型例である。聞きたくないことが聞こえない「勝手耳」は聞こえないフリをしているだけだが、長年言われ続けると本当に聞こえなくなったりする便利な能力でもある。気にすれば聞こえ、気にしなければ聞こえない、ということは日常生活でもよく体験することで、これは耳から入ってきた音が大脳で処理されて聞こえていることを意味する。

音楽については、音楽耳を持った人とそうでない人は聞こえ方が違うはずである。音が分かるとか理解が違うだけという考えもあると思うが、昔良く聞いたCDを今聞き返してみると違うCDのように新鮮に感じたりする。絶対音感の人と相対音感の人でも違うはず。そう考えてみると、音楽的に耳が進化すればするほど、その人が作る音楽はそれを聞く大衆とはだんだん離れていくのではという考えが浮かんでくる。しかし、進化しないとつまらない音楽しかできないのも事実である。

ソルフェージュでは何故、声に出して歌うか

音が聞こえるまでに脳内処理がされていて、人によって、または状況によって聞こえ方が多少なりとも違っているということを書いた。こういう能力は、視覚の場合と異なり、その人が生まれてから獲得してきたものであろう。

イヤー・トレーニングの授業で試験があるが、どうしても2音のインターバルが聞き取れない。楽譜ソフトでたくさんのインターバルを作り、聞き取る練習を必死でした。パーフェクトと自信をもって試験に臨んだが結果は惨憺たるものだった。その原因は楽譜ソフトのピアノ音源と教室のデジタルピアノの音色がまったく違っていたからであった。その時、インターバルよりもサウンドの違いでインターバルを覚えていたのかと気がついた。

CDを聞くだけで、または音当てをするだけでゲーム感覚で音感が身につく、というような教材があるとする。それらは自分の実力を試すには使えるかもしれない。しかし、何回か再生して当たるようになったとしても、他の音源ではどうだろうか? ある程度の効果はあるかもしれないが、上のような理由で、効率の良い方法とは思えない。

自分の楽器ではピッチが分かっても、自分が演奏したことのない楽器のそれは分かり難い。多分、多くの人は、音が低い上にやたらと倍音が多いベースのピッチは分かり辛いであろう。私自身サックスの音は聴き取りにくい。

どうしたらいいのだろうか? 自分の楽器で同じことをプレイしてみるのが分かりやすいかもしれないが、いつもそれがあるとは限らない。
同じ音を自分の声で歌ってみることは手軽で、いつでも身近なリファレンスとなる。ソルフェージュで歌うことを続けていると頭の中で無音で歌うことにも慣れて、更には、時間がかかると思うけど、ソルフェージュで聞こえてくることも可能となる。