ソルフェージュ教育の現状

ソルフェージュは、広義では音楽の基礎訓練全般を表す言葉で、読譜だけでなく聴音や理論まで含まれる。

文科省の学習指導要項音楽では移動ド唱法を使うように記載されている、ということは知っていたが、具体的にどの様に書いてあるのか興味で調べてみた。

指導要綱は10年に一回程度改定されているようで、平成29年告知の最新のものがネットで上がっていた。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1383986.htm

小学校学習指導要領(平成29 年告示)

(p.127)イ 相対的な音程感覚を育てるために,適宜,移動ド唱法を用いること。

短い文章で、どこに載っているのか探すのに苦労するので何ページかも表した。しかし、別ファイルである次の解説には詳しく載っている。

小学校学習指導要領(平成29 年告示)解説

(p.128)イの事項は,相対的な音程感覚を育てるために,適宜,移動ド唱法を用いることについて示したものである。相対的な音程感覚を育てるとは,階名唱において,音程,すなわち音と音との間隔を相対的に捉える力を身に付けるようにすることである。

なお,階名とは,長音階の場合はド,短音階ではラをそれぞれの主音として,その調における相対的な位置を,ドレミファソラシを用いて示すものであり,階名唱とは階名を用いて歌うことである。階名唱を行う際,調によって五線譜上のドの位置が移動するため,階名唱は移動ド唱法とも呼ばれる。この唱法によって,音と音との関係を捉えるという相対的な音程感覚が身に付くようになる。そのため,児童の実態を十分考慮しながら,学習のねらいなどに即して,適宜,移動ド唱法を用いて指導をすることが重要である。

他でも同様のことが書かれており、移動ド唱法を使うよう指導している。しかし、適宜という言葉は弱くて強制ではない印象がある。”児童の実態を考慮しながら” というのは、ヤマハなど民間で固定ド唱法を習っている生徒の場合は無理しなくてもいいよ、ということでしょうか。

更に驚くことに中学の指導要綱には階名唱法、移動ドという文字は一切出てこない。

中学校学習指導要領(平成29 年告示)

(p99)(5)  読譜の指導に当たっては,小学校における学習を踏まえ,♯や♭の調号としての意味を理解させるとともに,3学年間を通じて,1♯,1♭程度をもった調号の楽譜の視唱や視奏に慣れさせるようにすること。

え! 中学校で初めて調号が一個付くの?

じゃ、小学校でハ長調の曲だけでどうやって移動ドを教えるの? どうやって歌わせるの? 中学校の音楽の先生は小学校の学習指導要綱は見ないでしょう。

高等学校学習指導要綱(平成30年告示)

高校になって初めてソルフェージュという言葉が出てきます。音楽は選択なのでソルフェージュという言葉さえ知らない人が多いのに納得。

(p605)第4 ソルフェージュ

1 目標

ソルフェージュに関する学習を通して,音楽的な見方・考え方を働かせ, 専門的な音楽に関する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

 (1) 視唱,視奏及び聴音に関する知識や技能を身に付けるようにする。

 (2) 音楽を形づくっている要素の働きやその効果などに関する思考力,判断力,表現力等を育成する。

(3) 音楽性豊かな表現をするための基礎となる学習を大切にする態度を養う。

 

学校に良い音楽教育を期待するのは間違いで、良い音楽教師に出会えればラッキー、というのが現実のようです。それにしても、全体を通して感じるのは具体性に欠ける表現と長い文章。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください