Jazz Lick
Lickとはジャズ用語で短いフレーズ、会話で言えば単語や熟語に相当する。話の上手い人はボキャブラリーが豊富であるのと同様に、熟練したジャズプレーヤーはフレーズの引き出しが多い。
しかしながら、多くのフレーズを持っていればいいプレイができるとは限らない。よく喋る人が必ずしもうまい話し手ではないのと同じで、その質も重要である。
Lickの意味(構造やそこから得る雰囲気)を知って適切な場所で使われることは重要だが、ジャズの場合は特に個性が需要視される。スピーチでも個性的な喋り方をする人はもてはやされる傾向にある。1) 多くのLickが引き出しにある。2) そのLickを理解する。3)自分独自のLickを集める。ということを考える必要がある。
自分独自のLickを集めるには、CDや楽譜などから気に入ったフレーズを取り出し、どの機能(トニック、ドミナント、etc.)のフレーズとして使えるか考えるといい。
「ジャズソルフェージュ2」では、更にそれらのフレーズを発展(develop)させて何倍にも活用する方法を載せている。
Solfege Licks 音源
以前「ジャズソルフェージュ」読者から、Lickをソルフェージュで歌った音源の要望があった。それには ” 3)自分独自のLickを集める ” という考え方から、消極的な回答をしたのだが、今回、集めていたLick を使って実験的にソルフェージュで歌ったLick集を作ってみた。
音源はソルフェージュでLick を聴くだけでなく、自分の楽器でそれを再現して練習するようにした。Lickは、組み合わせて更に別のLick にもなるように、1小節以内の短いフレーズとした。
音源を作り、実際に練習として実践してみると、これはLickを覚えるだけではなく、ジャズの練習方法として非常に効率の高い練習となると感じた。
その想定外の効果について考えてみた。
バリー・ハリスのワークショップ
音楽をするときに一番役に立つツールは何かと聞かれたら、何と答えますか?
それは楽譜ではないでしょうか。記録方法としてだけではなく、理論を考えたり、学んだりと無くてはならないもの。
では、音楽をするときに一番弊害となるツールは何かと聞かれたら、何を考えますか?
やはり、それも楽譜だと思う。実際に楽譜を見ないで演奏すると音が良くなることが多い。その理由は演奏者が、楽譜を見ているときよりも、より聴くことに集中できるからであろう。
20年以上前のことになるが、ニューヨークのバリー・ハリスのワークショップに1度だけ参加したことがある。そこでは、耳で聴いて真似をする、という楽譜は一切使われないレッスン。バリー・ハリスの提示したフレーズを生徒がピアノで順番に弾くという方式であった。楽譜がないので、みんな小さなカセット・レコーダーを持って参加していた。
バリー・ハリスは間違いなくジャズ史に残る巨匠である。このワークショップは有名だったので、メソッドとしては評価されるものだと思う。しかし、彼のドゥヴァドゥバ・・・というスキャットのメロディーを聴いて楽器で再現するのは上級者レベルでないと難しい。
ビバップの優れた教材と言われている「The Barry Harris Workshop Video」というのがある。この中でも楽譜は使わずに、生徒は自分の楽器でスキャットに続いて真似ている。しかも、すごく早いテンポで長いフレーズ。
この教材には楽譜が付いているが、それで練習するのは彼のレッスンの主義に反する。しかし、ビデオだけでは難しすぎる。生徒は予め練習しているのであろうが、かなりの上級者である。彼の英語は聞取り難いし、楽譜だけが参考になった。
もし、この教材がスキャットでなく、12音の移動ド ソルフェージュでゆっくりと歌われていたら、ジャズ初心者から使えるものになっていたであろう。
Solfege Jazz Licks 音源
テンポ 「練習は遅いテンポから始めるようにする」、と多くの音楽教育者が言っている。そのテンポは極端に遅いので、かえって難しいときもあるが、通常のテンポで間違いながら練習すると、間違いが練習として身体が覚えてしまう。
この練習ではtempo=60から始めている。このテンポなら運指やインターバル、その他いろいろ考えながら練習できる。12キーの練習でも間違うことなくプレイできると思う。これができればtempo=120も簡単にできるはず。この方法は、はじめからtempo=120で間違いながら練習するより確実に早く習得できる。
ソルフェージュの音源 12キーでも聞き取りやすいように、低音域キーは男声で高音域は女声を使っている。
いずれもアメリカのネイティブな発音で、少しスウイングさせている。よって、ソルフェージュの発声をそのまま楽器で表現することで、ジャズ・リズムの練習にもなっているように思う。
ドラムスのリズムは1拍3連のsubdivisionがよく感じられるものとなっている。
楽譜を使わない この練習の最大の特徴は楽譜を使わないことにある。バリー・ハリスのワークショップの項でも触れたように、耳で聴いてそれを真似する、という練習の意味は大きい。しかも、この場合の元の音源はソルフェージュなので、それを聴いた時点で楽譜上の音符がイメージされる。更にはソルフェージュなのでメロディーの解析までができてしまう。短いフレーズでテンポが遅いので、初めてのフレーズでも間違えることは非常に少ない。楽譜を見ないので運指その他を考える余裕ができる。
これがこの音源最大の想定外の効果で、Lickを覚えるという最初の目的の方が副産物に思えてくる。
独自のLickの習得 ” 皆が同じフレーズを弾いたら恐い” 、最初はこの危惧があったが、しかし、実際に練習してみて、Lickの数が多いのとフレーズを断片的なものに限定してあるので、皆が同じフレーズをプレイするという心配はあまりないと感じた。
実際にはこの音源は、宣伝にも関わらず、生徒を除くと現時点で5名ほどにしか出てないので要らぬ危惧であろう。
最初のLickはMajor Lickから始めたが、これはトニック(I コード)を想定している。(4番目の音( Fa , Fi )はアプローチ・ノートとして使っている。)
次は、ドミナントLickを作りMajor Lickと併せての練習、その次がサブドミナントLickでドミナントへ続く練習、そしてマイナーのLickと続ける予定であるが、最後まで続けられるか、乞うご期待。
ダウンロード この音源はダウンロードできる(有料:200円〜)ようになっているので興味がある人はUNOJAZZ.BASE.SHOPへ。
ドミナントリックとサブドミナントリック、マイナーリックも楽しみにしてます。o(^-^)o
メジャーリックはいいでしょう!
値段もワンコインまで下げたけど、ほとんど売れなくて、次作は作れるかどうか分からない状況です。
メジャーリックだけでも、固定ドの人の移動ドへの強制訓練には有効かと感じています。
どうやったら移動ドを習得できるのかまったくわからなかったので目からウロコでした!こんな方法があったんですね!(楽器を習いに行ったことが無いので知らなかったんです…)
自分で作ったリックやソロ、覚えにくい曲の歌のメロディなども移動ドでソルフェージュしてみようと思います!
曲の理解が深まりそうです!o(^-^)o
とてもいい練習になると感じました!
こういった音源をみないので大変恐縮ですが、ドミナントリック、サブドミナントリック、マイナーリック編首を長くして待ってます!