Tell Me A Bedtime Story アナライズ

Tell me a bedtime storyは、アルバムFat Albert Rotunda中の一曲で、1969年に最初にレコーディングされた。曲は12+12+8+12小節のブルース形式でモードとConstant structureの手法が使われている。関連する曲としてChick Corea の Spain (1979年)がある。曲はQuincy JonesのSounds…And StuffLike That!!(1978年)など多数録音されスタンダード曲となっている。(このアナライズは2019.08.27 再編集しました)

先ずはコード進行を見てみよう。

曲のフォームはA A’ B A” となっており、Aセクションは12小節、Bセクションは8小節からなる。Locomotion や Wave でお馴染みの形式だが、Aセクションはブルース形式の様には見えない。各Aセクションはコードを見る限りではまるで別に見えるが、メロディーはよく似ている。Aセクションのメロディーが同じでコード進行が異なるというのもこの曲の特徴である。

調号は何もない楽譜(key of C / Am)と#(シャープ)2つ(key of D / Bm)のものがあるが、この曲の場合はコードだけではキーは判別できない。調号が無い場合は、ジャズでは調号を付けないことがあること、最後がCmaj7で終わっていること、または無調の曲の場合が考えられる。シャープ2つの場合は、最初がGmaj7(#11)から始まっているので、それをIVmaj7と考えれば I maj7は Dmaj7 ということになること、またはメロディーの臨時記号から総合的に判断して#(シャープ)2つとなったのかもしれない。

キーが判別できないとアナライズはできない。そこで先ず最初にキーの同定から始める。

最初のイントロ部分とAセクションの導入部分のコード進行は、G maj7とF#m7が2小節づつ繰り返されている。このコードの動きはモードの動きのようにみえる。Gmaj7は Tonic LydianでF#m7は5度の位置にCharacteristic pitch(特性音)(C#音)をもつCadence chord に相当する。(モードのコード進行については、Gymnopedie #1アナライズを参照)

A、A’、A” セクションの最後の4小節とエンディングはmajor7thコードが連続しておりConstant structureと考えられる。 Bセクションの最後の4小節もminor7thコードが連続して現れ Constant structureを形成している。(Constant structure は If you never come to me アナライズ参照)

Constant structureのコード進行は機能的なコード進行ではない。従って各々のコードは機能コードでなくても良いが、このようにメロディーが静的でコードを変化させる Constant structure の場合は、個々のコードは機能コードである方が違和感なく調和する。そこでドミナント・コードを除く全てのコードが機能コードとして働くキーは何かを調べてみた。

以上のコードがダイアトニック・コードまたはモーダルインターチェンジ・コードとして機能し、この曲に使われているMajor7th コードを当てはめてみると、BまたはEのキーの可能性がある。

minor7thコードの場合はどうだろう。

やはり、キーはBまたはEのどちらかのようである。Bキー(またはG#mキー)ならシャープ♯は5個、Eキー(またはDbmキー)なら4個となる。

メロディー

コードだけではキーの同定ができないので、次にメロディーを検証する。

 Intro. のメロディーはRelative Ionianで A major または E majorに相当する。キーをB とすると上のように♭が付き、3度がないので B MixolydianまたはB Dorian が考えられる。Aメジャー・キーのようにも見える。更に⬇のG#音はコードのGmaj7とクラッシュを起こしている。これはメロディーとコードが乖離していることを示している。

イントロのメロディーとコードは、異なったモードとトーナルセンター(キー)が使われており、Polymodalityと呼ばれる。つまり、メロディーは(例えば)Bドリアンであるが、コードはG Lydianとなっている。

※ このIntro.のPolymodalityについては “The Chord Scale Theory & Jazz Harmony”(B.Nettles & R.Graf ,1997)に例として記述がある。更にConstant structureの項では、この曲のMajor7thのConstant structure部分をBmaj7 を I Maj7として考える、としている。

Polymodality 

ポリモーダリティは2つ(またはそれ以上)の異なったモードまたはキー が同時に現れることをいう。Polymodality is the simultaneous use of two or more different modes, or two or more different modal centers.(B.Nettles & R.Graf.  The Chord Scale Theory & Jazz Harmony, 1997)

Polymodalityはクラシックで使われた技法でもある。Polymodality involves two or more different modes on the same or different tonal centers.(Persichetti, Vincent.  Twentieth-century Harmony, 1961)

① モードだけが違う場合(例:メロディーがE Aeolian、コードがE Phrygian)

② トーナルセンターが違う場合(例:メロディーがDb Lydian、コードがG Lydian)

③ どちらも違う場合(例:メロディーがB Dorian、コードがG Lydian)

※ Bluesは一種のPolymodalityと言える。メロディーはminor pentatonicであるが、コードはmajor chordである。

Relative Ionian

リレイティブ・アイオニアン という言葉は、同じ調号を持つ各モードをIonian(Major)で表すということで、便利な言葉なので使用する。D Dorian のRelative Ionianは C Ionian(Major)となる。また、D DorianのRelative Phrygianは E Phrygian、C Major の Relative minor はA minor などの使い方も。日本語では平行調に相当するが、それをモードにも広げたと考えても良い。

イントロと次のA、A”セクションの初めのコードはトニック・コードのG LydianとのCadence codeのF#-7のようであり、モード手法が使われていると考えられる。イントロのメロディーもモードのように聞こえる。モードにおけるメロディック・ケーデンスはトニック(Do)に落ち着くのが一番自然である。その次がSol(5)、Mi(3) と続く。

イントロのメロディーはAメジャーのようにも見えるが、Re(2)に終止すると通常の曲のようであり、モード的ではない。

メロディーのキーをB とすると、イントロには3度(Mi)がないのでDorian かMixolydianか区別がつかない。3度がないとメジャーかマイナーか分からないので独特の浮遊感が生まれる。これはモードでよく使われるが、その場合、コードで何のモードかはっきりさせる必要がある。モードではトニックの I コードが強調される。 I コードがBmならB Dorian、B ならMixolydianであるが、G Lydian のTonic コード Gmaj7が使われている。この Gmaj7の5度の音(D音)はBキーのminor 3rd(Me)に相当し、B Dorian のように聞こえる。

H. Hancock のソロを聞いてみると、D音が優位でやはりB Dorian のようである。

12小節の3つのAセクションは同じメロディーである。最後の4小節以外はコードだけが変化している。メロディーは3度が♭しているので、B Dorian であるが、6度がないのでB Aeolianも可能性がある。最後の4小節のConstant structure 部分はBキーでSol (5) と歌うのが最も頻度高く自然。

12 + 12 + 8 + 12 小節のBlues形式と考えると、Wave の例にあるようにB セクションは転調もあり得るが、矢印の音がMi(M3)になったので、ここはモードが変わって B Mixolydian と考えられる。B MixolydianのRelative Ionian はE Major である。ドミナント・コードを除く全てのMajor7th とminor7thに共通するキーはBまたはEであったので、当然 B Mixolydian のメロディーはE Major上のダイアトニック・コードにフィットする。

Ending はB Majorキーにモードが変わっている。Mi  Do  Re  Sol  の繰り返しであるが、Bmaj7の Mi に終止感があるように感じる。

メロディーのまとめ

(1)イントロ : B Dorian Mode

   A、A’ : B Dorian Modal Blues

   B : B Mixolydian Mode

   A” : B Dorian Modal Blues

   エンディング : B major

(2)コードとの関係

メロディーとコードは乖離していて、A セクションのメロディーはB Dorianであるが、コードはB Majorのダイアトニック・コードと同じものが使われている。B Majorキー上で B Dorian のメロディーはどのように感じるか? Dorianは Majorスケールの3度と7度が♭したものであり、♭3と♭7はBlue noteである。しかも、曲はブルース形式で書かれている。

次にBluse 形式について考えてみよう

Chick Corea の Spain (1979年リリース)が頭に浮かんだ。Spain はBマイナーのブルースでTell me a bedtime story と同じGmaj7 から始まる。コードの動きに共通点もある。

Spain の方が後期なので、Chick がHerbie Hancockの曲 からアイデアを得たと考えるべきだが、Spain のアナライズはTell me a bedtime story の解析に役立つと思える。

アイデアの元となった曲と同じキーにしたり、曲名にその痕跡を残して敬意を表すことは J. Coltraneの曲などでよくある(Lazy bird、Count down、Satellite、etc.)。そう考えるとSpainがBマイナーであることも納得できる。

マイナーブルースの最初の4小節は、バリエーションはあるものの基本的にトニック・コードの領域でI mが来る。ブルースでは5小節目に向かうExtend dominant が支配することがあっても(Bebop blues)最初の小節はトニックコードである。しかし、SpainではSDM機能をもった bVImaj7とドミナント・コードで、最後までトニック・コードが出て来ない。これをどう解釈するか? 

ジャズでは通常、コードはターゲットとなるコードに向かっており、全体的にみるとそれらはターゲットコードの一部と捉えることができる。つまり、Gmaj7もF#7も本来トニックのBmに向かうコードであるが、偽終止が起きて終止しなかった、と解釈する。かなり無理があるようにも思うが、どうだろう?(例えば、Stella by starlight の最初はトニックに向かう ii – V7 が続くが解決せずにIVコードに向かい I コードは出現しない。)

F#-7をF#7に変えた時点でChickはそのように考えたのではないだろうか?

2行目の SDM – TM の部分は| Em7 | A7 | Dmaj7 | Gmaj7 |とDiatonic 4th cycle が使われていて、うまくBmキーの SDM – TM の動きに合っている。

この動きは Tell me a bedtime story の A” で使われているものである。尚、このA7はドミナント・コードではないので5度下へ解決する矢印は無くても良い。(ドミナントコードとしての機能を併せてもっていると考えると矢印はあっても良い。)

Spainの最後のコードは iv コードに向かうドミナントの V7/IV であるが、これは曲の頭がサブドミナントであることを意味している。この点からも上記の考えが成り立つ。

Spain のコンセプトが Tell me a bedtime story と同じと言う訳ではなく、むしろアイデアを得たと考えるべきであろう。 Tell me a bedtime story が作曲された1960年代はモードの全盛期で、H. Hancock が 12+12+8+12 のブルース形式にモードを部分的に使うことを考えたのは自然である。そういえばDolphin Dance も部分的にモード手法が使われている。

ブルース形式を念頭に Tell me a bed time story をアナライズする

(1)キーは B であること。(2)ブルース形式である。(3)モード手法が使われている、を念頭にアナライズする。

一般的なモード・ブルースは、ブルース形式のトニック以外のところにnon-Tonicコードがくる。通常の曲のようになってしまうので、II  V7  I ケーデンスのようなものは使われない。

Maj7th のConstant structureシリーズの前の C maj7はB maj7 に向かうケーデンスのように聞こえる。bIImaj7 は半音下のImaj7 に動くとき、アプローチ・コードとしての機能をもつ。

歌で聞いてみると、この部分にブルースのCadenceがあるように聞こえる。ここから Me の音がメロディーに現れるので、Dorian だと言うことができる。

ブルース形式は時に位置関係が前や後ろに少しズレることがある。

A セクション同様に、A’もブルース形式の変形と見ることができる。(T – SD – T – Cadence – T の動きは同じ)

A’ セクションについては、最初から通常のコード進行のようにみえる。しかし、一部にモードが含まれるブルース形式とすると、最初の小節の B7sus4 コードはモードの I キーと考えられる。モードにおいて、sus4 コードはMixolydianのTritoneを除くために使われる。Dorian モードでも3度のない曖昧さを出すために使用され、F#m7/Bのハイブリッド・コードでも表現されるが同じものである。次にドミナントのB7が来るので、そのリレイトッド・マイナーのF#-7/B のようにも見えるが、2ndary Dominant(V7/IV) に向かうリレイトッド・マイナーがsus4 になるのは稀で、モードにおけるトニックと考えた。

B セクションの3連続するsus4コードはクロマチックに下行しており、Extend dominantようであるが裏コードで(半音で下行している)sus4コードが連続することは通常はない。なぜなら裏コードのコードスケールは#11を含むLydian b7 などが使われるが、sus4のコードスケールは通常Mixolydianとなる。

4小節 minor 7thのConstant structure が続く。すべて同じコードスケール(Dorian)が適用される。このConstant structure のルートはRe  Mi  Fa  Sol となっている。この4小節とイントロの最後の小節は 5/4 拍子で書かれている(Quincy Jonesは4/4拍子でレコーディングしている)。

B セクション最後の F#-7 は、次の A” の G Lydian modeのCadence chordでもある。

このA” セクションが一番ブルース形式を示唆している。A” の8小節までは(F#7 が F#-7 に変わっている他は)Spain と同じであることに注目せよ。

Maj7th のConstant structure 部分のボイスリードを見てみると非常にスムースで、この4小節はターンバック Turn back のような役割に聞こえる。

※ 最後のコードが bIImaj7(Cmaj7)となることについて。

Cmaj7 はBmaj7にクロマチックに下行しているので、アプローチ・コードの機能と考えていい。しかし、エンディングの最後がCmaj7で終わった場合は、トニックの代理とも考えられる。(bIImaj7はMaj7thの位置にトニック音を持っているので、時にトニックの代理となることがある(例)Monk’s mood)。

※ ♯2つの調号について

Intro.とAの6小節、A”の4小節は典型的なモードのパターンを持ち、G Lydian Modeと考えられる。この Relative Ionian はD メジャーで調号が♯2つとなる。G Lydianの Relative minor(平行調)はB minor(B Aeolian)であるが、メロディーは B Dorianで書かれている。

B マイナーの調号は D メジャーと同じシャープ#2つであるが、Bmコードはどこにもない、Bメジャー・キーはシャープ#が5つもあるが 、A のブルース部分のメロディーがB Dorian minor で書かれているためと考えられる。

マイナー・キーではNatural minor、Harmonic minor、Melodic minor が混在して出現するが、ジャズでは Dorian minor もそれらに加えられることがある。6度と7度の組合せでこの4種類が使われる。しかし、調号はNatural minor(Aeolian)のものが使われるので、Bmの調号を使用したとも考えられる。

コード・アナライズ


編集後記:Tell me a bedtime story のアナライズは難しく大変でした。このアナライズは2019.08.27 再編集しましたが、編集前のものは書いているうちに新しい発見があり、非常に長い文章、アナライズになってしまいました。今回、それを整理するために編集し直しましたが、再度の発見もあり、一部訂正箇所と追加項目もあります。

ご意見、ご感想を歓迎します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*キャプチャ コードを入力して下さい