セカンダリー・ドミナントの V7/V とLydian Modal Interchange などの II7 をどのようにして区別するかについて、「ボサノヴァ&ジャズ アナライズ集」の読者から質問をいただきました。
バークリーではドミナント・コードは全て V7 で表現していて、それ以外のセブンス・コードの I7 , bVII7 などと区別している。
II7 は、Modal Interchange chordとしてはLydian Modeに唯一存在するが、II-7 V7 のII-7 が II7 に変わった場合(例:D-7 G7 ⇒ D7 G7)はV7/Vと区別がつかない。
従って、アナライズ集では「であろう」という表現にあるように、主観的なサウンドの解釈になっています。
特に次の ① Desafinadoに関しては II7 としたが、5度下のC7に解決しているのでV7/V が正しいのかもしれない。(間にGm7が入っているが、V7/Vではよく起こる)
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II7 と V7/V の鑑別は、II7は通常 I または IV に解決し、V7/V はV に解決する。
この考え方では Desafinado は V7/V または、 V7/V と II7 の両方の機能をもっていると考えることもできる。
また、Desafinado の G7(b5) コードについては5度がフラットしているので(♭5)としたが、③ではメロディーが ファ♯なので(♯11)が正しいかもしれない。しかし、後述のように(♭5)の可能性もある。(b5)と(#11) はコードトーンとテンションの違いがあり別物だが、混同使用はよくある。
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④ と同じコード進行は、Girl from Ipanema、Take the A Train などでみるが、V7に解決しているので V7/V には違いない。II7 との2つの機能を持つ(Dual Function)とも考えられる。
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④の3小節目からと同じ進行は⑤でも見られる。これは終止形の⑥の2小節が、Bセクションなどで半終止で終わるために2倍に伸ばされたものであろう。Just Friends ではどちらの進行も見られる。
II7とV7/V のどちらもコードスケールがMixolydian なのにどうして#11 または b5 の音が使われるのか?という質問も頂いた。
各セカンダリー・ドミナントには最適なコードスケールがあるが、「オプションとして b9, #9, b13, Altered dominant, Whole tone scale を使うことができる」とバークリーでは教えていた。
しかし、Augmented sixth chord の可能性もあり、次に追加しておく。
French augmented sixth chord ( Fr+6 )& V7(b5)
V7(b5) というコードは、2005年当時、バークリーのパフォーマンス部門では使われていたが Harmonyでは出てこなかった。最近のバークリーではV7(b5)をどの様に扱っているのだろうか? しかし、クラシック部門で使われている教本「Tonal Harmony」では見つけることができる。
Augmented sixth chord はクラシックで古くから使われているコードであるが、それがポピュラーやジャズで使われている例として「Tonal Harmony」で ⑦ Bernie’s Tune が紹介されている。その3,4小節目が French augmented sixth chord だという。マイナーであるがこの8小節は A Train によく似ている。
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Augmented sixth chordは、ドミナント(Solの意味)に外側に向かって半音で解決するコードとして最初マイナー・ハーモニーで使われたが、メジャー・ハーモニーでも同様に使われている。+6thは♭7thと異名同音であるが、音の動く方向が違う。
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+6th コードは3種類あって、+6 のルートにMajor 3rdを足した Italian+6thとそれに全音上の音を足して4Voice としたFrench+6th、minor 3rdを足したGerman+6th がある。これらの名前はヨーロッパ地図上での国の位置によるものだが、Fr+6 は V7(b5) と、Ger+6 は V7 と異名同音である。
注目は Fr+6 である。Key of C の場合、これを書き換えると Ab7(b5) となる。しかもこのコードは転回すると完全にD7(b5) と一致し、同じコードである。
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この D7(b5) をみると、Take the A Train に#11や#5 が使われたり、DesafinadoやBernie’s Tuneに#11がメロディーとして使われる理由ではないかと思えてしまう。
以上、質問に答える形で説明したが、一つの考え方として捉えて頂きたい。これらのコードはいろいろな考え方が存在すると思う。コメントを歓迎します。
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