Out Of Nowhere アナライズ

名曲 Body and Soul(1930)の作曲者として有名な Johnny Green の1931年の作品。 この曲の魅力ポイントは最初の8小節にあるが、特に3、4小節目の解釈は色々あって興味深い。

①(解釈1)先ず 2ndary dominant( subV7/V) の偽終止とする考え方。3、4小節目は Eb7 となっている楽譜もあり、 Eb7 が A7 のTritone substitution(いわゆる裏コード)と考えれば、Take the A Train などと同じなので4小節目までは説明できるが、次のコードがトニックという偽終止が成り立つのか? 理論的な説明ができない。

(解釈2)bVI7 というアナライズ。 bVI7 というコードはNatural minor 由来のモーダル・インターチェンジコードとして、bVImaj7 が変化したAltered subdominant minor コードとしてBerklee では説明している。

subdominant minor(SDM)であればトニックコードに向かうのは理にかなっている。Berklee はまた議論の余地があるが稀なコードの一つとして bVI7 を紹介している。同じ構造のsubV7/V との鑑別は、このコードは V7 に解決しないで I または I/5に動く。bVI7 の前には高い頻度で I または bVI7のrelated II-7 がくる 。(*1)

(*1) Harmony 4 Fall 2001 Edition : Dominant 7th chords without dominant function

(解釈3)3、4小節目がシフト(転調)しているという説明。 確かに 3-4 小節と 7-8 小節はコードとメロディーが同じ動きをしており、転調の典型のように見える。 サウンド的にもこの説明は理解できる。 しかし、転調メロディーとコードが元のメロディー(7-8 小節)より先に来ているというのはどうかという問題が残る。

(考察)① はここでメロディーも暗くなり、コードの動きも解釈2の説明が一番理にかなっているように見える。bVI7 はまた、マイナー・ブルース で IVm7 の代わりに使われることが多く、その場合も前後は I コードなので状況は似ていると言える。(例*2) 

(*2) 例 : Birks Works / D. Gillespie

更に視点を変えると、この曲が G キーであることも3、4小節がマイナーに変化したことと関係あるかもしれない。つまりG と Gm キーは♯一つと♭2つの関係にあり、マイナーに変わっても臨時記号の数が少ないので演奏しやすい。G キーの曲には G メジャーと G マイナーを繰り返す(Parallel key、同主調)曲が多い。(例*3)

(*3) 例 : How Hight the Moon(1940)、I’ll Remember April(1941)、Here’s That Rainy Day(1953)

解釈1と2、いずれにしても3、4小節目のコードスケールは Dorian と Lydian b7 となるが、解釈3の転調と考えると4小節目は8小節目と同じ Mixolydian b13 となることになる。

② Am に向かう II-V7 を2回繰り返しており、7度(f#)がフラットしているのでAmに転調とも取れるが、フラットしている音はアプローチノートであり、M.I. コードに合わせたとも言えるのでるので転調とはしなかった。

③ ここで B-7(b5) となっているのはメロディーに合わせたのであるが、このようにマイナーコードに向かう2ndary II – V7 はよくマイナー系の II-7(b5) – V7(b9)となる( Harmonic minor M.I. コード)

④ この4小節は典型的な半終止   | A7  |  A7  |  A-7  |  D7  | の A7 が裏コードとなったもの

⑤ D7 sus4 なっている楽譜もあるが同じもの  D7 sus4 =  A-7/D で Hybrid chord となる。この時の sus4コードは subdominant(SD)機能

⑥ C-6 は A-7(b5) /C の略表現 : III-7 の前には IV コードが来ることが多いが前のコードがA-7 なのでその変化したA-7(b5) である IV-6 コードになったのでは。ベースラインを半音でアプローチするために3度がベースにきている。

Out of Nowhere はWebにもたくさんのアナライズがあります。あなたはどのように考えますか?

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