イヤートレーニング
専攻がミュージックビジネスであろうがミュージックエンジニアリングであろうが、1から4までのイヤートレーニング(ET)は全学生の必須クラスになっている。 入学時の聞き取りテストで、どのレベルのクラスから始まるかが決まる。 私はET1からのスタートだったが、あまりに退屈なのでテストアウトを試みたことはボストン通信で書いた。 最近になってよく考えてみると、ET2や3からスタートした新入生は聞いたことがない。 ET1かET4のどちらかに別けられるのかもしれない。 もしテストアウトができてET2からのスタートだったら、あまりの忙しさにぶっ倒れていただろうし、私はこれでよかったのだろう。 それにバークリーのETの教え方を初歩から学べたことは悪いことではない。
ETではリズム、メロディー、ハーモニーそれにソルフェージュ(Solfege)を歌いながら音感を養っていく。 月、水、金の週3回、同じ時間帯に一時間のクラスがある。
リズムは自分で指揮をしながら、“Tah”などの声を出して歌っていく。 かなり複雑なリズムも出てくるが、2拍3連などはまだないのでそれほどの難易度ではない。
メロディーの聴き取りは、基準音を聞いてから数小節の簡単なメロディーを譜面に書き取る。 これもまだ♯や♭の臨時記号がないので、それほどの難易度はない。 ここで一つおもしろいと思ったのは、メロディーの終わりなどでよくあるシ-ドとソ-ドが聞き間違え易いことである。 耳の良さそうな友達にこのことを言うと、“それは絶対にありえない”と言っていたが、ETの先生は“聞き間違え易いので注意せよ“ということだ。 特に早いフレーズでは勘違いが起きやすい。 シとドの間は僅か半音、ソとドは完全4度とかなり違うのに何故間違いが起きるのか? ソの倍音のシを感じてしまうため? シドとソド“どちらも低い方からドに向かう、自然に流れる音(こういう音のペアーをTendency Toneという)であるから?
ハーモニーは和音をアルペジオで歌ったり、コード・チェンジを聞き取ったりするが、ET1では基本的に3和音だけなので難易度は低い。 ドミナント7thの4和音のみET1の範囲内であるが、このET1の先生、範囲外のsus4コードを頻繁に出した。
インターバル
ET1は概して退屈だったが、一つだけ悩まされた項目があった。 インターバルの聞き取りである。 インターバルというのは2つの音の間隔で、度数として長3度、完全4度などと表すものだが、聞き取れない。 高い方の音はなんとか分かるが、同時に鳴っている低い音が聞き取れない。 危機感を感じた私は家で特訓をすることにした。 パソコンのフィナーレという音楽ソフトを使い、あらゆるインターバルの音を作って音当てをした。 努力の甲斐があり、ほぼ全て当てられるようになって試験に臨んだのであるが、結果は散々たるものであった。 な〜ぜだ! どうやらインターバルというよりパソコンから出るサウンドの違いを認識していたらしい。 教室にあるテストの時に使う日本製電子ピアノで特訓していたらもっと良かっただろうが。 実際、楽器によって音が聞き取り難くなる、ということはよく経験することである。 一般に使われているイヤートレーニングの教材は私のやった方法によく似ている。 この経験は音感の訓練の方法に考えさせられるものがあった。
実はET4まで受けたクラスで、このように同時に音を鳴らしてインターバルを当てさせるのはET1だけであった。 以後の上級クラスでは2つの音を別々に鳴らしてくれた。 インターバルに関してはET1の難易度が一番高かったのである。 この先生はET部門ではなく、アンサンブル部門のトランペッターだが、ETを教えるのが初めてで、教え方をよく知っていなかったのかもしれない。 しかし、彼は一つだけいいことを教えてくれた。 インターバルを歌う時、自分の知っている曲で同じインターバルをみつけて、それを歌ってみる、と言う方法。 例えば完全4度なら、「結婚行進曲」の“ソドッドド”のソとドの間、トライトーン(増4度)なら、ウエストサイドストーリーの「マリア」など。 知っている曲の最初の部分のインターバルを調べて、自分用のリファレンスを作ろう。 1オクターブ内の12のインターバル全てを歌うのは結構難しい。
初心者が間違いやすいインターバルがある。 完全4度と完全5度である。 これは倍音が関係していると考えられるが、先生もこの間違いについて指摘していた。 これも耳のいい人には信じられないことであろう。
ここで一つ感じたこと。 やつら欧米人は概してインターバルの聞き取りがよくできるのに、インターバルがつながったものであるメロディーの聴き取りを難しそうにしていたのがおもしろい。 私はメロディーの方が楽であったが、日本人はやはりメロディー人間か?
ソルフェージュ
ソルフェージュはハンガリー人のゾルターン・コダーイ (Zoltan Kodaly) という作曲家が提唱した歌い方に沿っている。 ミュージカルの“サウンドオブミュージック”の中でジュリー・アンドリュースが Do, Re. Mi, Fa, Sol, La, Ti, Do と歌っていたやつである。 Si が Ti になっているのは、子音の D, R, M, F, S, L, T 一文字だけで音のピッチが分かるようにするため。 ソルフェージュは自分で指揮をしながら“移動ド”(Movable Do)で歌う。 移動ドではCのキー(ハ長調)での“ドレミ”はどのキーに移調しても“ドレミ”と歌うが、絶対音で歌う場合は、例えばFのキー(ヘ長調)では“ファソラ”になる。 バークリーでは移動ドの場合は Do, Re, Mi,…..という階名を使い、絶対音は C, D, E,……のアルファベットの音名で表す。
ET1のソルフェージュはキー(調)がシャープ(♯)とフラット(♭)が2個(DキーとBbキー)までで、臨時記号の♯や♭もないので難しくはない。 ET2からは臨時記号がだんだん増えて複雑になってくるが、ソルフェージュは全ての階名に対応しているのでソルフェージュが歌えれば簡単に譜面に書くことができるのだ。 ピッチが同じで記譜が違う音、例えばAbとG#など(こういう音をEnharmonicという)も区別するので、正確に記譜ができる。
ソルフェージュは、半音ピッチを上げる場合は音を上げやすい母音の i を、下げる場合は音を低く発音しやすい e を付けるが、元々付いている Re の場合は半音下がった音は Ra に変化する。 このシステムがあまり日本に普及していないのは、日本人にLとRの区別が難しいこと、カタカナにすると Re と Le、 Ri と Li(Cのキーでは D と Ab、 D# と A#)がどちらも“レ”、“リ”になってしまうことが原因のようだ。 実際に勘違いしたりするが、唯一の救いはレとラの音程が離れていること。 テストでLとRの発音の間違いにより減点されるようなことはなかった。 ソルフェージュはLとRの訓練にもなると前向きに考えたい。
ソルフェージュのほかにSol-Faというのがある。 Sol-Faというのは、楽譜ではなくDo, Re, Miの文字だけを見ながら歌うのである。 リズムのない譜面のようなもので、ひたすらインターバルを感じて歌う。 文字だけなので音が上へ行くか下へ行くかは、近い音へまたは歌いやすい方へ行けばよい。
ここは一番小さい教室かもしれない。 特定の教室が6時以後は2時間単位で使用できる。 ドラムスは無いが、録音機材は使える(右奥)。 アンサンブルルームが空いていないときや広い部屋での練習、簡単な録音に使うといい。
アレンジング2
アレンジ(編曲)2は必須科目のアレンジ1が入学時のテストで単位が取れたので、大学側が勝手に入れた科目だが、アレンジの経験のない私のような人は初セメスターでとるべきではない。 良い先生で良い講義の内容だったので、英語の聞き取りがあやふやな時に受けるのはもったいなかった。 授業の内容がよく理解できたとしても、いろいろな知識や経験がないとひと味違ったいいアレンジをすることは難しい。
英語に慣れていないことで得をすることも希にはある。 突然、先生がクイズ(Quiz)をすると言って問題を5つほど出した。 紙に答えを書けという。 試験だとは思わなかったので、テキストなどを見て答えを書いた。 名前を書いて提出させられ、翌週採点して返ってきた。 クイズというのは簡単な口頭試験のことらしい。 堂々とカンニングするとばれないものなのだ。
日本で使う外来語はここではかなり違うことが多い。 プロジェクト(Project)のことも最初、「何人かで集まって何かやるのかな?」と思っていた。 しかし、これは研究課題のことで、ミッドターム(Midterm exam、中間試験)とファイナル(Final exam、期末試験)までに曲をアレンジして提出する最も大事な、一種の試験である。 宿題もホームワークとはあまり言わなくて、アサイメントAssignmentが普通。
ところで、このクラスは初セメスターの生徒ばかり集められた10人足らずクラスで、日本人が半数近くを占めていた。 こういうジャズっぽい編曲や作曲関係のクラスは結構日本人が多い。 その他は世界各国からの留学生と現地人である。 米国でもジャズはマイナーな音楽なのだ。
こういう重要なクラスは全て”Work Book”という教科書があり、それに沿って学ぶことが多いのだが、この先生は毎回10枚ほどの手書きのコピーを渡してくれてそれに沿って教える。 ワークブックは全然使わない。 自分が出版しようと思っている原稿のコピーのようだが、急に渡してくれて説明されても困る。 英語は十分に聞き取れない上、予習することもできない。 唯一救われたのは、プロジェクトの提出が譜面だけでよかったこと。
通常、プロジェクトは譜面に加えて、録音したテープまたはCDでの提出が必要である。 希にコンピューター音源でもよいときがあるが、普通はプロジェクトバンドという奨学生で構成されたバンドに演奏を依頼する。 しかしこれがたいへんである。 この時期はミッド、ファイナルの試験前である上、申込時には譜面ができあがっていなくてはならない。 譜面は全パートを書いたコンサート譜に加えて、各楽器用に移調したパート譜を作らなければならない。 時間がかかる上に、この時期はプロジェクトバンドへの依頼が殺到するので、早く仕上げて申し込まないと提出期限に間に合わないことになる。 間に合わないと自分で演奏者を集めて録音するしかない。 提出しないと評価はFで0点になり、それまでの点数が悪く、全平均が60点以下になるとそのクラスはFが付く。 つまり単位がもらえない。
このクラスに優秀な留学生がいて、ずっとAを取っていた。 しかし、この最後のプロジェクトで何が気に入らなかったのか、先生はFを付けたらしい。 かわいそうな彼は最終でかなり悪い点数になったとこぼしていた。
私の場合、ミッドではまあまあだったが、ファイナルは散々。 幸いにも以前からフィナーレという譜面ソフトを使っていたおかげで、ミッドのプロジェクトではその音再生機能を使ってチェックし、作成した。 しかし、ファイナルでは忙しさのあまりその確認作業をやらずに提出してしまった。 音チェックの重要性を認識したプロジェクトであった。
ラボ
ラボは楽器のテクニックを磨くクラスでベース科は1クラス8名までだが、ブルースラボは私が無理に入ったから9名だ。 しかし、アコースティックベースは私だけで、他は全てエレクトリックベース。 アコースティックベースの生徒が少ないこともあるが、アルコ(弓引き)のクラス以外はエレキベースばかりのことが多い。 同じフレーズを弾くにもエレキなら簡単なので、一緒は不合理と思うこともしばしばある。
このクラスはジャズをやっていた人にとっては易しい。 ファイナルのテストはコルトレーンのブルースばかりのCDの中から1曲選んでベースをコピーし、CDと一緒に弾くというものだった。 試験当日クラスに行くと、いつもは私が一番早いぐらいだが、珍しく全員が揃っていた。 最初の生徒はすごく早い曲を見事に弾き終えた。 すごい! 大きな拍手。
CDの中に1曲だけ、くり返しパターンが多くウオーキングは2コーラスだけの ”Mr.Syms” という楽な曲があって、私も含め次から全員がそれを選んだ。 2人目は正直あまりうまくなかった。 まばらな拍手でかわいそうだったが、彼らははっきりと区別する。 最後は私、スピーカーから一番離れていたのでズレないか気にしながら弾いていたが、終わると大きな拍手をくれた。 先生も誉めてくれて、次の日のプライベートレッスンの時も、「きのうはよかった」と言ってくれた。 更には校舎の前で友達と話しているときも、同じラボの生徒が、「よかった」と声をかけてくれた。 自慢しているようにみえるが、そうではない。 そうかもしれないが。 曲をコピーするとき、その頃それほど耳のよくなかった私は何回も聞いて採譜し一緒に弾いてみることをした。 そのことがその曲のタイム感、雰囲気を身につけたのだと思う。 CDなどと一緒に練習することの重要性を認識した。 また、彼らアメリカ人は実に自然に相手を誉める。 これを何とか身につけたいと思った最初であるが、これはあんがい難しい。
ラボは4つのクラスをとった。 ベースライン2は僅か生徒3人。 先生のジムはポールチェンバースの採譜本で有名な人である。 私もその本を日本で手に入れ、練習したことがあるので、クラスに持って行きサインをお願いした。 彼は非常に喜んでくれた。
リーディング2はチェアーのリッチが書いたエレキベース用のリーディング教本を使った。 珍しくここでは生徒5人中、アコースティックベースが4人。 その内一緒に入学したマキを含め日本人は3人というクラスであった。 このクラスの先生はすごく穏和でやさしい。 しかし卒業前にみた彼のライブではその想像できない激しい動きにびっくり。
残るラボは弓を使ったクラシックの基礎のクラス。 私の場合、日本で弓を習う機会を持たなかったので、弓はこのクラスが始めてである。 しかし、初めてではこのクラスは難しかった。 結局はウイズドロー(Withdraw) することにした。 これはミッドタームまでにドロップすれば、授業料は帰ってこないが評価の対象にはならないというもの。 このとき先生は一つ下のクラスに替えることができるといってくれたけど、あまりに忙しかったので、他のクラスへの悪影響も考え、クラスを減らしたかった。 確かに一つ下のアコースティックベースの基礎クラスがあったが、“エレキベースの生徒が対象”のように書いてあったため見逃していた。 0.5単位の損失なので被害も少ない。
洗濯
息抜きに洗濯について一言。 これだけでかなり文章が書ける。
ボストンでは、下着があまり汚れない。 特に冬季には外は寒く建物の中は極端に乾燥していて汗があまり出ないのがその理由。 しかし、きれい好きの日本人はちゃんと洗濯しなくては。 テレビを見ていたら、西部劇のシーンだったか、クリントイーストウッドがバスタブに浸かりながらバスタブの中で自分の靴下を洗っていた。 これは使える! さすがに靴下は自分と一緒に洗うことはしなかったが、シャツなどで試してみた。 そのうち、黒Tシャツが乾いたら白っぽく膜のようなものができてしまった。 日本の時から使っていた「ダブ」はこちらでは固形石けんが普通だが、どうやらその石けんのクリーム成分がTシャツに固着したらしい。 それ以後それはしなくなったが、バスタブで時折手洗いの洗濯をした。 アパートの部屋をシェアーしている場合にはさすがにそれはできないが、私は一人用だったので何の問題もなかった。 お湯は使い放題なのもいい。 バスルームに換気扇などはないが、湯気はまるで立たない。 洗濯物は直ぐに乾いてしまう。 そのぐらい部屋の中は乾燥しているのだ。 最初の頃は部屋にコントラバスを置いていたので、乾燥してひびが入るのを防ぐため加湿には気をつけた。 洗濯物を部屋に干すのは加湿には良い方法だ。 たいていのアパートの地下にはコインランドリーがありそれを使うことが多かったが、乾燥機はほとんど使わず部屋で干すようにした。 こちらの乾燥機は衣服がよく傷むらしい、というのも一つの理由ではある。
なんで米国人はそんなに「あまのじゃく」なのだ、と思うことが多い。 先ほどの「ダブ」はこちらでは固形石けんだと書いたが、洗濯石けんは日本が粉状なのに対して液体が普通なのだ。 スーパーに行くと同じ製品名の洗濯石けんが何種類もある。 よく見るとそれぞれ香りが違うらしい。 ブリーチも洗濯石けんと同じような容器に入っている。 洗濯石けんはソープSoapとは書いてない。 Detergentという。 それで日本人の友達は間違えてブリーチで洗濯したらしい。 彼の縞模様のトランクスは更に複雑な模様になったという。
米国土産にTシャツをもらい、洗濯したら色落ちして一緒に洗った白い服に色が付いた経験はあるでしょう。 これはどうやら石けん会社と衣料会社との力関係によるように思う。 こちらのテレビで洗濯石けんのコマーシャルを見ていると、いかに服の色が落ちないかをアピールしている。 白く仕上がることをアピールしているのはブリーチのコマーシャル。 ブリーチすりゃ白くなるのは当たり前、色が落ちないのは汚れも落ちないのでは? これじゃ、衣服の染色業界はなんの努力もしない訳だ。
アンサンブル
アンサンブルクラスは2時間で1単位、実際に演奏を楽しむクラスで、特に試験もないので比較的楽なクラスといえる。 レベル(レイティング)とジャンル、先生が誰かということでクラスを選ぶが、楽器により制限がある。 ギターの生徒は非常に多いので、たいてい1クラス2人いて、しかも1クラスしかアンサンブルクラスを取れない。 ドラム、ピアノ、ベースはもちろん1クラス1人ずつだが、たとえばベースは1セメスターに2クラスまで取ることができる。 それで2クラス取った。 アンサンブルはジャズコンボのみ希望していたのだが、大学側がセットしてくれたクラスに行くとどうもポップスやロック系統らしい。 先生もジャズのことを知らないようで、親切にも先生が私を別のクラスに変える手続きをしてくれた。 そのクラスはボーカルの入ったクラスだが、ボーカルの生徒がスティーリー・ダンを好きで、先生はジャズもやりたがっていたが、結局スティーリー・ダンばかりになってしまった。 コントラバスでは無理のある曲が多く、レゲエまであったので、友達からエレキベースを借りて弾いたりもした。 ドラム君にレゲエがうまいと言われたが、はじめて弾くレゲエであった。 私もレゲエばかり聴いていた時期があったので、それが役に立ったのかもわからない。
先生はニューヨークから毎週通ってくるピアニストで、ポールサイモンとツアーもしている、ラテンからジャズまでこなす。 アンサンブルクラスの1日目では、たいてい好きなミュージシャンを聞かれるのだが、私がマーク・ジョンソンと言ったら「今度同じアパートに住む」と言ったので感激したものだ。 この一年後彼はECMから出ているマークのCDにオルガンで参加していたが、そういう関係があるためかもしれない。 彼は私に「もっと英語を勉強しろ、そうすればもっといろいろ教えられるのだが」と言ったが、そのことを友人に話すと、「彼はフランスから来て、彼こそ英語がなかなかうまくならない」と言っていた。
もう一つの私がアドしたアンサンブルはベーシストの先生のクラスだった。 彼の英語もアフリカンアメリカン独特のなまりがあり、初セメではたいへんだった。 一度、パフォーマンスセンターの大舞台で、PAのテストを兼ねて演奏ができたのはよかった。 客は誰もいなかったが。
アンサンブルクラスの試験に相当するのは、セメスターの最後にするリサイタルかもしれない。 ファイナルの頃に、プログラムを作り、2〜30分の舞台経験をしてビデオも撮る。 客はほとんど居ないけど。 演奏活動の傍らニューヨークなどから週1〜2日、 バークリーにアンサンブルを教えに来る先生も多いが、そのような先生のクラスのリサイタルはないことが多い。
プライベート・インストラクション
最後のクラス紹介になってしまったが、日本人学生がプラベといっているのは個人レッスンである。 週1回、30分だが2単位で、最も高い授業料のクラスになる。 計算をしてみると30分のワンレッスンが1万円余になる。 部屋の外でベースのカバーを外してチューニングを済ませて万全の用意で待機、時間がきたらドアーをノックする。 我々、プレーヤーの学生にとっては一番重要なクラスなので時間の無駄はできない。
どの先生のプラベをとるか、ということは大きな関心事。 先生の中には有名なミュージシャンも多い。 ファーストセメスターの時のプラベで誰を選ぶかは、入学時のステートメントテストの実技の時に聞かれる。 分からないと言えば適当にされるが、私はボストンでベースを買ったベーシストから情報をもらっていた。
プラベのテストはファイナル時のみでProficiency Testと呼ばれる。 試験官の先生は二人一組で、課題を出す先生と採点する先生に分かれるが、全レベルを通して、採点する先生は今までクラスを取ったことのない先生ばかりであった。 一人15分のオーディションでせわしないが、夏セメでは和気あいあいと30分だったりする。
試験の内容は、レベルによってクリアーすべきことが決まっている。 ちなみに、ベース科のレベル1は14種類のスケールとペンタトニック1オクターブ×12keys、12種類の3和音×その転回系2種類×12keys、自分で用意した曲を一曲(インプロなし)と簡単なリーディングである。
通常は二人の試験官が朝早くから、エレキベースを含め、たくさんの生徒を試験するのだが、ファーストセメスターの私のときは違っていた。 指定された部屋の前で待っていると、ライン2のジムと採点する先生が来て、私だけのために試験をして帰って行った。
ファースト・セメスターは疲れる
できれば入学前にボストンに来て数ヶ月間語学学校に通うべきであった。 ボストンに行く2ヶ月前に日本で6回だけ語学学校に行ったが、日本ではこのいろいろの訛りのある英語が体験できない。 授業中に真剣に英語を聞いているから疲れる。 宿題や課題もいっぱいくれて、ウイークデーは風邪をひく暇もないという感じ。 土曜日になるともうくたくた!土・日はソファーベッドに横になっていることがほとんどであった。
ファーストセメスターでは難しいクラスや重要なクラスは後のセメスターにまわして、できるだけ楽をしょう! ESLなど英語のクラスをとろう! “情報を制する者がバークリーを制する”、友達からいっぱい情報を集めよう。 もらったガイド冊子は全て読もう!
今となっては遅いけど。