Dolphin Dance アナライズ

1966年リリースされた Maiden Voyage 中の曲で、モード手法やハイブリッド・コード(Hybrid chord)、Contiguous II V などの手法が使われている。

メロディーは Motif development(モチーフの展開)の手法で作られており、作曲の手本とされる。

Dolphin Dance                                             HERBIE HANCOCK    1965

(A)①はB-7/Eb と表記されることもあるが、いずれも同種の Hybridコード とみることができる。

テンションがペダル・ポイントとなることで機能の変更が起きている。

(B) bVImaj7 からもう一度 C-7に戻っていることから、②のC-7はVI-7 ではなく、転調と考えるのが妥当。

メロディーもEbキーの Mi Fa Sol Re からCmキーのMe Fa Sol Reに変化していている。

2回めのC-7は Pivot コードとして働き、key of Gに転調する。

(C)Contiguousとなっているのは、Contiguous II-V7のことで機能が同じコードに解決するII-V が連続している(参考曲:Alone together 9-10小節)。

更に G7 もサブドミナント・マイナー(SDM)に向かっている。

譜面によってはドミナントコード(Db7とBb7、G7 )が書いてありません。

(D)サブドミナントとしてCmaj7(IVmaj7)の代わりにModal interchangeコードのC-7  (IV-7)が使われている。

(E)G のtonicペダルが4小節続くが、モードは小節毎に変わって行く。

A/G はG Lydian hybridコード。

A/GをUpper structure triadとした場合はGmaj7(9,#11,13)と同じでやはりLydianスケールが適用される。

4小節目はF/G の楽譜もあるが、Ebmaj7(#11)/G の場合は転回形で、Eb Lydian がG からスタートするとG Aeolianに、更に Fからスタートすると次のコードと同じ F Mixolydianになる。

自然に転調を促す役割と思われる。

(F)F のtonicペダルlが3小節続くモードと考える。

2小節目の  D/F は特殊なHybridコードで F Mixolydian b9 が元のスケール。(例外タイプとして、3度をもっているが b7thのないHybridがMixolydian b9でみられる)

(G)1 小節目と3 小節目のメロディーはMajor 2nd上行している。

従って1 小節目は A-7が元の形で、その前に Eb7(#11) が挿入されたと考えられる。

4 小節目のD-7も挿入されたと考えると、Major2nd上行するContiguous II-V7となり、更にもう一回連続上行する。

(H)3~6 小節は E Tonicペダルで、テンションがペダル・ポイントとなることで機能の変更が起きている。

Hybrid コードと転回形が交互に現れる。 

Dmaj7/E は B-7/E と表記されることもあるがどちらも同じ Hybridコード。

(Hybridは3度を含まないのでMixo. Hybrid とDorian Hybridは同じコードとなるが、H. Hancock はここをDorian で弾いている。)

ハイブリッド・コード(Hybrid chord)

Hybrid コードは分数コードの分子に分母(Bass音)の3度とRootを含まない。 

作り方はスケールまたはモードのRoot, 3rd, avoid noteを除いた音で上部(分子)のコードを作る。 

sus4コードは3度を含まないのでHybridコードの1種と見ることができる。

同時にリリースされた “Maiden Voyage” はHybridコードで作られている。

Hybrid コードは3度がないので、マイナーかメジャーか曖昧になる。

曖昧さが特徴であるモード曲によく使われる。

メロディーのアナライズ(Melodic analysis)

Dolphin dance はモチーフ・デベロップ(Motif development)の手法で書かれている。

メインのモチーフはモチーフA(Mi  Fa  Sol  Re )で、種々に展開(develop)させている。

曲の形式(Form)はThrough compose と言われる次々と変化していく形式となっている。

モチーフをくり返すことで全体の統一感を保っている。

A、B で2回と最後の I でそのままくり返している。

BでDiatonic sequence+リズムの変化。

E で Exact sequence(つまり転調)とその Diatonic sequence。

F で Bと同じ展開とインターバルの変化の2フレーズ。

I で別のExact sequence(転調)と最初のMotif A。

Motif Bはインターバルの変化(Intervalic variation)が一回直ぐ後に、

Motif CはほぼExact sequence が一回直ぐ後に発展させている。

画面が見難かったため書き直し、Melodic analysisを加筆しました。(2019.07.15)