マイナーキーのコードスケール

Chord scales in minor key

マイナーキー(短調)ではAeolianが使われるが、そのスケールの不完全さからNatural minorとHarmonic minor、Melodic minorの3種類のスケールがミックスして使われる。よって、コードに対応するスケール(Chord scale)はどのマイナー・スケールを使うかによって変わってくる。How Insensitiveのコードスケールを例にマイナーにおけるコードとコード・スケールを考える。

ダイアトニック・コード Diatonic chord

更に、ジャズにおいては3種類に加えてDorianが使われることがある。これら4種類の違いは6番目と7番目の♮の組み合わせによる。

4種類のスケール上にできるダイアトニック・コードは次のように多種になる。ダイアトニックコードのコードスケールは元となるスケールが分かれば決められるが、7番目以外は2種類ずつ同じコードが含まれており、コード名だけではコードスケールは絞り込めない。その場合はメロディーに含まれるノン・コードトーン(非和声音)から決められるが、それがない場合はどちらかを選ぶことになる。

 

D マイナー・キーのときのダイアトニック・スケールは次のようになるが、Harmonic minorとMelodic minorの場合は太文字で表したものを除き見慣れないスケール名が登場する。(スケール名は既存のスケールを元に表すが、既存のスケールを何にするかによって変わる)

 

モーダルインターチェンジ・コード Modal Interchange Chord

bVIIm7(Cm7)のルーツとしてPhrygian mode からのModal Interchangeが考えられる。メジャーキーではNatural minorからのモーダル・インターチェンジで一時的に暗くすることが多いが、このマイナーキーではより暗いスケールのPhrygianからの借用となる。

 

マイナーキーのセカンダリー・ドミナント

メジャーキーでは、IIからVIまでの5種類のダイアトニックコードに向かうコードが 2ndary dominant chord で、それらの裏コードを含めると10種類、本来のDominant chordを含めると12種類になる。12音全てのルートを持ったDominant chordを使用することができる。

マイナーキーでもセカンダリー・ドミナントは起こるが、3種(または4種)のマイナー・スケールが混在するため複雑となる。実際はメジャーの場合よりその頻度は少ないように感じるが、どのようなセカンダリー・ドミナントが使われるか検証してみた。

 IIm7に向かうドミナントである V7/II はメジャーキーではよく使われるコードであるが、マイナーキーでは稀となる。

II-7(b5) は、メジャーキー(この場合はF:キー)ではVII-7(b5)に相当し、それに向かうセカンダリー・ドミナントはない。その理由として、そのルート音がダイアトニックではない(C:キーの場合、B-7(b5)コードに向かうのはF#7)、VII-7(b5)が単独でははっきりした機能を持たない、subV7/IV と同じコードになる、などがある。

Jazz minor やDorianが使われた場合は、 V7/II のルート音はダイアトニックであるので可能性はあるが、通常マイナーキーの ii-V はHarmonic minor が使われる。

 bIII(Fmaj7)に向かうドミナントであるV7/bIII(C7)はダイアトニック・コードのbVII7(C7)と同じコードである。ダイアトニック・コードとしての機能が優先されるため、このコードはSDM (Subdominant minor)機能のbVII7である。

次のようにドミナントコードのような動きをすることもあるが、(Cm:またはC:キーで) Fm7   Bb7  Ebmaj7  は IVm7   bVII7   bIIImaj7 であり、SDM – SDM –  TM(Tonic minor)の典型的な動きである。(この進行は単なるDiatonic 4th cycleの場合やEbキーへの転調となることがある。転調した場合のbVII7はV7との2つの機能を持つ(Dual function)ことになる。)

V7 / IV(D7)はメジャーキー同様によく使われる。裏コードのsubV7/IV(Ab7)も可能。

 このドミナントの位置にある Vm7コードはトライトーンがなくて安定しているためドミナントコードの役割を果たさない。V7/V としては Harmonic minor由来のドミナント・コードに向かうコードが使われる。

V7 / bVI(F7):マイナーキーではbVIコードに向かうセカンダリー・ドミナントが現れる。

 bVII7 はSDMの機能を持ったダイアトニック・コードでドミナント・コードではない。(メジャーキーでは半音下のVI-7に向かうセカンダリー・ドミナントの裏コード subV7/VI となることもある。)

bVII7(C7) に向かうセカンダリー・ドミナントはIV7(G7)と同じコード。後述⑥の理由でV7/bVII はない。

V7 / V (E7)は通常Harmonic minorのV7に向かう。この裏コードsubV7 / V(Bb7)は bVI7(Bb7)と同じでその識別が難しいときがある。(bVI7 はbVImaj7が変化したものでAltered SDMとされる)

 Harmonic minorの7番目のコードはディミニッシュ・コードで、5番目のコードの上部構造を持つ(A7(b9)=C#o7/A)ためドミナント機能を持っている。

 IV7 (G7)が現れたとき、VIIコード(C)に向かうセカンダリー・ドミナントではなく、Melodic minor またはDorian由来のダイアトニック・コードとしての IV7 が優先する。機能としてはサブドミナント(Subdominant dorian function)である。

IV7(G7)に向かうセカンダリー・ドミナントV7/IV(D7)は可能性としては考えられるが、ダブルドミナント(ドッペルドミナント)のようになる。また、D7がブルースコードの I 7 として IV7に動くような形になり使用は難しい。

⑦⑧ メジャーキーの場合と同じ理由でこれに向かうセカンダリー・ドミナントはない。

 Dorian由来の bVIImaj7(Cmaj7)は重要なコードの一つだが、このコードに向かうセカンダリー・ドミナントは IV7(G7)と同じになり、IV7としての機能が優先される。

この他セカンダリー・ドミナントの裏コード(Substituted 2ndary dominant)が使われるが、頻度は少ない。

 

How Insensitive のコード・スケール

コードスケールを決めるためには先ずコードのアナライズをする。

 

How Insensitive のコード・スケールと解説

 

左にはメロディーとして使われている音を複数小節分まとめて載せた。複数のコードスケールが可能な場合はどちらかを選ぶ。

 

①②⑮⑯トニックのダイアトニック・スケールで、メロディーの b6を満たすスケール。

③④D Harmonic minorスケールの7番目のコード。よってコード・スケールはD Harmonic minorスケールの7番目から始まるスケールとなる。

 

⑤⑥オリジナルではこの後 F7 が入りII-7 のような使われ方をしている。作曲のコンセプトからもC-7の変化形か? m6 コードは I-6 やIV-6 などで見られるが、3度と6度の間にトライトーンを含む。メジャーキーではC-7の6度の音はアボイド・ノートでC-6にはならないが、マイナー・キーでは問題ないのか? IV-6 は II-7(b5)の3度がベースにきた転回形でブラジル音楽ではよく見られる。ここではA-7(b5)の転回形とは考えにくい。転調してトニックの I-6 と考えてもコードスケールは C Dorian で問題ない。

考えれば考える程難しいが、作曲のコンセプトであるボイス・リーディングにより使われた非機能コード(Non-Functional chord)と考えたほうが良いように思う。

 

⑦⑧3度がベースにくるのはブラジル音楽の特徴。Bo7としなかったのはメロディーのA音が合わないため。

 

⑨⑩㉑㉙Natural minor のダイアトニック・スケール

 

⑪⑫Phrygianの2つ目にできるコードもbIImaj7 であるが、進行からナポリタン・コードとした。いずれもコードスケールはLydian となる。

 

⑬㉒通常、マイナー・キーのii-VはHarmonic minor由来が使われる。NTはNeighbor tone.

 

⑭㉒㉚PT(Passing tone)としたが、Avoid noteのMajor7thの音で強拍にある。

 

⑰㉕C-6と同じ D Phrygian Modal Interchange Chordとして捉えられる。25小節目は F7のRelated minor 7th としても(Dual function) C Dorian が使われる。

 

⑲⑳Non-functionalなディミニッシュ・コードの場合はディミニッシュ・コードにM9th上のTensionを加えたスケールの B Diminished scale(全・半)が適用される。しかし、見せかけながらパッシング・ディミニッシュと考えると難しくなる。

メジャーキーでは、下行のディミニッシュは上行のそれと同じになるのだが、マイナーキーの場合はどの元のスケールを選ぶかによる。ここではBo7コード+C-7コードのスケールを挙げた。左の9thと11thはノン・ダイアトニックで右のb2ndとb4はアボイド・ノードなので、どちらでも可と考えられる。

 

㉓㉔㉛㉜7度が♭するコードスケールで♮9なのはこの2つのスケールである。

 

通常、Extended DominantのコードスケールはMixolydianが使われるが、半音下に動く場合はLydian b7がよく合う。

subV7/II は V7/bVIでもある。V7/bVI と考えた場合はMixolydianとなる。(E7の項参照)(オプションとして他のドミナント・スケールも可)

 

Related minor 7thは Dorian scale が使われる。

 

2ndary Dominant のコードスケールはコード音に加え、トーナリティーを保つためにダイアトニックなNon-chord toneを加える。(オプションとして他のドミナント・スケールも可能である。)その場合、6番目の音は向かう先のコード(A7)の3度の音になる。

マイナー・キーの場合はどのモードを使うかによって複数の選択肢があり複雑である。ここでは、メロディーの b9、A7の 3度であるC#の♮13を選んだ。

 

マイナーキーのコードスケール まとめ

(1)Natural minor, Harmonic minor, Melodic minor & Dorian minorの4種類のマイナースケール上にできるコードはダイアトニック・コードなので元のスケールが決まればそのコードのルートから始まるスケールがコードスケールとなる。

(2)コード音とメロディー音から一つのマイナー・スケールが絞り込まれない場合は、どちらかを選ぶ。

(3)モーダルインターチェンジ・コードの場合はそのNon-chord toneをそのキーの音に合わし、一番機能的にも近い既存のコードスケールを選ぶ。

(4)ドミナントコードの場合は、それがダイアトニックコードの bVII7、IV7、bVI7 ではないか見極める。その場合はそれらの機能が優先するのでセカンダリー・ドミナントではない。

(5)セカンダリー・ドミナントコードの場合のコードスケールはそのNon-chord toneをそのキーの音に合わしたコードスケールを使う。そうすることで転調感を抑えることができる。

(6)セカンダリー・ドミナントのコードスケールはオプションとして上以外のスケールを使用することができる。マイナー・コードに向かう場合はb13 を、更に暗くするには b9を含むスケールが合う(その逆も真)。

(7)Substitute dominant (裏コード)もベース音が半音で下行するためマイナーキーでは効果的だがその使用には注意が必要。そのコードスケールはLydian b7など #11 を含むスケールが合う(#11は表コードのルート音)。

 

How Insensitive のアナライズにコードスケールを加えるため、その解説を書いたところ、その複雑さのため大変な分量になってしまった。そのため独立して載せることとした。

マイナー・キーはその不完全さ故にはっきりしない部分もあり、一部研究レポートのようになってしまったが、概ね検証できたと思う。不備な点が見つけられたなら是非コメントいただきたい。                             

(2019/02/14)

 

 

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