Moment’s Notice アナライズ

Moment’s Notice はJohn Coltraneにより1957年レコーディングされ、翌年のアルバム「Blue Train」でリリースされた難解な曲のひとつ。一見、次々とキーが変わってColtrane Change を連想するが、転調しているという確かな証拠はない。Ebキーのまま、転調なしで理論的な説明が可能である。

このアルバムには “Lady Bird”から生まれた”Lazy Bird”、ブルースをaaba形式のaに使った”Locomotion”など既存の曲の考察から生まれた曲が目立つ。Lazy Bird は次のアルバムの「Giant Steps」に、Locomotion はTom Jobin の”Wave” へと繋がって行ったと考えられる(当サイト参照)。Moment’s Notice も”Con Alma”(1954年) にその類似性が見られることはCon Almaアナライズで書いた。

 

 

 この曲で一番困惑するのは最初のII-Vの動きであろう。これは当サイトのContiguous II-Vで詳しく説明しているので、そちらを見てほしい。このII-V(またはV7)が半音から短3度までの一定のインターバルで上行する現象はいくつかの曲で見られ、Non-Functionalなパターンとされている(つまり、この曲の場合の1小節目と2小節目は機能的に関連がない)。

しかしながら、Contiguous II-Vの考察でも書いたように機能的に考えることもできる。

元のコード進行がEbに向かうExtend II-V(II-V が曲頭方向に向かって連続すること) だとするとコードは、

G-7  /   C7   |   F-7  /  Bb7  |  Ebmaj7

となるが、その C7 を A7 に代理できればいいということになる。

これは可能である。

進行が分かり難くなるので実際に使われることはほとんどないが、短3度離れたドミナント・コードは代理として使える

A7 のコード音をC7 として認識するとこのようになり可能だと分かる。

通常、Contiguous II-Vでのメロディーもコードと共に上行するが、この曲では同じ音となっており、双方にアベイラブルな音で構成されている。このアイデアはCon Almaから来たものかもしれない。そうでなくても静的なメロディーの場合はコードをビジーにするというのは定石ではある。

 ここはトニック・コードのEbmaj7かG-7が来るところであるが、D-7  /  G7  となっている。

前の小節の4小節目との繋がりは? ある。 Db7はサブドミマイナーであるが、ドミナントとしても機能(Dual function)した場合は、次のG7 の裏コードとなる。表と裏が前後して現れるタンデム・ケーデンス。 その後、同じくContiguous II-V が起こっている。

 この曲は転調していると解釈されていると思うが、ここでは一度も転調していないアナライズをしたい。

このDbmaj7を転調の I maj7にしなかったのはメロディーにある。メロディーとコードが一緒に動けば転調と考えるが、微妙に違う。

Dbmaj7はLydianなので(#11を含む)、bVIImaj7 というDorian由来の Modal Interchange コードとした。

Eb Dorian ModeでのDbから始まるスケールはDb Ionian と同じになるが、Modal InterchangeコードとしてEbメジャー・キーで使われた場合は、Dbのコード音以外はEbキーに合わせる。結果として、コードスケールはDb Lydianスケールとなる。

 ③から④への繋がりはAll the things you are (5〜6小節)などでお馴染みの bIImaj7  |  II-7  /  V7  |のイミテーション。

 

 ここまでは普通の動きだが、3回目のContiguous II-Vが現れる。

この部分は機能コードとしても考えられるので、このようなアナライズにした。

 bVII7はDual functionでドミナントの機能も持ち、5度下のbIIIに向かうことがある。転調する場合としない場合があるが、すぐにEbに向かっているのでGbmaj7 も転調ではなく、Modal Interchange コードであるトニックマイナー機能のbIIImaj7とした。(コードスケールはGb Lydian )

 この前からの進行  Ab-7  /  Db7  |  Gbmaj7  |   F-7  Bb7  | は On Green Dolphin Street(13〜16小節)やStar Eyes ( B section )と全く同じ。

 

 ここに冒頭の動きの元と考えられる進行がある。G-7  /   C7   |   F-7  /  Bb7  |  Ebmaj7

 F-7/Bb ペダルは機能の変更が起きて、Bbの3度を欠いたハイブリッド・コードとなっている。Bbsus4(9)と同じ。

 

以上、Moment’s Notice を転調無しでアナライズした。「曖昧さ」はジャズの特徴でもあり、転調しているかどうか迷うことは多い。もし転調無しで考えられるなら、転調無しで理解した方が断然有利である。転調していない方が移動ド ソルフェージュで歌いやすいし、曲も覚えやすく移調も楽になる。転調様のメロディーで増えた臨時記号は12音ソルフェージュで容易に解決する。

モードの変化・転調・あいまいな転調は「ジャズソルフェージュ2」第10章に例をあげて説明しています。

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