I Remember You アナライズ

I Remember You はBセクションで頻繁に転調しており、移動ド ソルフェージュで歌い替えして歌うことは難しい。しかし、この曲は転調していないと考えることも可能で、あいまいな転調例として「ソルフェージュ2」で採り上げた。本文の内容を補足するため、更に詳しくアナライズの説明をする。

I Remember You は 映画「The Fleet’s In」の挿入歌として1942年に発表されたが、作曲者のVictor Schertzinger はその前年に亡くなっている。メロディーはガイドトーンにより作られている。フォームは A A B C だが、C セクションがブルース形式となっている点で All the things you are(1939年Musical song)と類似性がある。All the things you are は A セクションで転調を繰り返すが、I remember you は B セクションで頻繁な転調をする。

Harmonic analysis : I Remember You

 この E7 はセカンダリー・ドミナントのV7/III である。本来 IIIm7(トニック機能)のAm7 に解決するところが、同じ機能のトニック・コードのFmaj7に向かった。つまり偽終止である。I maj7が偽終止でIIIm7に向かうことはよくあるが、これはその逆となっている。Tonic substitute はその意味。

この偽終止は ” Imitating V7 to bVImaj7 ” という考えでも説明できる。ドミナント・コードはトニック・コードに解決するが、同じトニック機能を持ったIIIm7やVIm7にも向かい偽終止が起きる。実際はVIm7に向かうことは少ないが、VIm7がNatural minorからのモーダル・インターチェンジ・コードのbVImaj7に置き換わったとき、V7 – bVImaj7 というケーデンスができる。bVImaj7の機能はSDMであるが、同じ6番目のダイアトニックコードという関係で可能である。    

” Imitating V7 to bVImaj7 “:つまりドミナント・コードは半音上の maj7thコードに偽終止が起こる。この現象はIVmaj7やbIIImaj7、bVIImaj7 などに向かう場合も起きる。IVmaj7に向かう有名な例ではSomeday my prince will comeがある( Bbmaj7 | D7 | Ebmaj7 )。

E7の Related minor 7th であるBm7はBm7(b5)となることが多いが、それは b5の音がトニックのFに相当するから。しかし、ここはややトーナリティーを損なうBm7が使われている。

 Am7 / D7 はモーダルインターチェンジ・コードのAbmaj7(bIIImaj7)が使われることがある。

 ここのメロディーは1小節目のメロディーのダイアトニックなシーケンスとも取れるので IVmaj7のままでもいいが、Imaj7とのピボットコードとし、Bbへの転調とした。この部分のキーが F: 、Bb: いずれの場合でも次の Em7はEm7(b5)となるべきであるが、そうなっていないのは単なるII – V7 – I の転調とみるべきか?

 これは、セカンダリー・ドミナントからの偽終止による転調テクニックである。つまりA7はDm7に向かうが、偽終止でDmaj7に向かい、それがトニックとなる。もう一度 II – V7 – I を繰り返すことで転調をはっきりさせている。

このBbmaj7からDmaj7への動きはGiant stepsのMajor 3rd上行する動きと同じである。 Bmaj7 / D7 | Gmaj7 / Bb7 | Ebmaj7 | Am7 / D7 | Gmaj7 |

 DキーからCキーへMajor 2nd下行する動きはHow High the Moon などに見られるよく使われる転調方式。

 ここからはブルースフォームになる。2,3小節目はサブドミナント・ケーデンス(IV – I)の代わりの役割。

 通常ここはIVコードが来るが、その場合はその前のコードからC-7 / F7 | Bbmaj7 となる。しかし、そうすると2小節共にメロディーがコードのルート音になってしまう。メロディー音がコードのルート音になるとメロディーが埋もれてしまい、(特にジャズでは)冴えない音になる。そのため同じサブドミナントのIIm7にしたのであろう。

 通常の形の Am7 / D7 | Gm7 | C7 | F6 | とした場合は、D7のところにメロディーの G音が、C7 に F音がくるが、いずれもアボイド・ノートになるのでそれを避けたのであろう。

転調しないでアナライズした場合

転調しないでアナライズした場合はこのようになる。

⑨ ここは Picardy 3rd でDm7 がPicardy 3rd でメジャー・コードに変わったと考える。

Picardy 3rd(Tierce de Picardy)は歴史的に、マイナーが最後のケーデンスでMajor I コードに解決するものだが、曲の途中でも使われることがある。Cole Porter の曲によくみられる。 ⇒ What is this thing called love?

⑩ C7 になるところだが、Lydianからの modal interchange chordの Vmaj7に代わったと考える。

Melodic analysis : I Remember You

I Remember You のメロディーはガイド・トーンをベースにそれを修飾する音で書かれている。上はそのガイド・トーンのラインであるが、一部パッシング・トーン(経過音)も含めている。(それに比べ、All the things you are はコードの3度の音をベースにそれを修飾する音で書かれている。)

ガイド・トーン(Guide tone)はコード・トーンまたはテンションの音であり、共通の音またはスケールで次に続くコードのコード・トーンまたはテンションに動く。ほとんどのガイド・トーンは下行するが、時に上行することもある。最も一般的なラインはコードの3度と7度を繋いだものであるが、その有名な例にAutumn Leaves がある。通常、ガイド・トーンはアプローチ・ノートで装飾される。

A セクションのガイドトーンは 、Ti Te La Le Sol と半音で緩やかに下行している。

 最初の注目点はメロデーが7度のTi から始まっていること。Key of C としたいところだが、それでは普通だ。Ti Do Sol La のDo Sol La は次のTi に上と下から向かうアプローチ・ノート(Delayed diatonic approachと言える)ではあるが、1小節目はモチーフ(Motif , 動機)として機能しているように見える。

 3小節目でモチーフが繰り返され、4小節目でモチーフの展開(Development)が起きる。これはリズムが同じで音の高さが変化したもの。

C.T.App :Chord tone approach コード・トーン・アプローチ

NT : Neighbor tone 刺繍音

B セクションは転調していないと考えてメロディーをアナライズする。ガイド・トーンは Mi Re Ra Do Ti と下行する。

 モチーフのDiatonic sequence はスケール上で別の音から始まり同じステップ数で動く。

 ここから2小節を繰り返すが、2回目のではリズムのバリエーションを付けている(Rhythmic transformation)。コードがDmaj7になっているのはガイドトーンとして Ra(F#音)にするためであろう。

C セクションはブルース・フォームになっている。ガイド・トーンはA セクションと同じから始まり、最高音の Sol からSol Se Fa Mi Re Do Ti と下行し、Do Re と上行しDo で終わっている。

 C セクションは A セクションと同じメロディーから始まっており、これもAll the things you areとの共通点である。C セクションをA’ と考えれば当然ではあるが。

 これもモティーフの展開形と考えられる。

 このあたりに最高音(Climax)がきているのは定石。ドラマチックに。

 ここは Ti Do Re とガイド・トーンが初めて上行している。今までなかった動きは終止感に役立っている。

I Remember You は B セクションで頻繁に転調しており、移動ド での歌い替えが難しい。この曲は転調していないと考えることもでき、転調なしで移動ド で歌うことでメロディーやハーモニー(和声)の構造の把握が容易になる。メロディーはガイド・トーンを元に書かれており、ガイド・トーンに合わせてコードも動いていることがよく分かる。

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