Wave アナライズ

この曲の特徴の一つはフォーム(Form)にある。

AABA形式のAセクションにブルース・フォームを使う曲は、John ColtraneのLocomotion などがあるが、それらはRhythm changeのブリッジである。

Jobimはその形式を踏襲するものの、BセクションではThe Girl From Ipanema やOne note Sambaにみられる同じメロディーを転調して繰り返すということをしている。

また、当時全盛期であったモードの手法を取り入れている。

この曲の特徴の一つはフォーム(Form)にある。

AABA形式のAセクションにブルース・フォームを使う曲は、John ColtraneのLocomotion(「Blue train」1957)や Clark TerryのTee Pee Time(「It’s what’s Happenin’」1967)などがあるが、それらはRhythm changeのブリッジである。

Jobimはその形式を踏襲するものの、BセクションではThe Girl From Ipanema やOne note Sambaにみられる同じメロディーを転調して繰り返すということをしている。

Aセクションの形式はブルースではあるが、只一箇所を除いてはブルース臭さは無く、洗練されたBossa Novaに仕上げている。

ブルースのコード進行は様々あるが、機能の位置関係は上のようになり変わることはない。

例はD ブルースの一般的なコードである。

冒頭のアナライズ楽譜を元に説明すると、

① ♭VIo7のコード・スケール

♭VIo7は下行してV7にアプローチするディミニッシュ・コードだが、IVに向かうセカンダリー・ドミナントのII – V7 のII-7にアプローチしている。

同じく下行するディミニッシュ・コードである♭IIIo7と比べると♭VIo7の出現頻度はかなり少ない。

コードスケールは次のようになるが、メロディーはそこから外れていない。

フラット系(下行する)のアプローチまたはパッシング・ディミニッシュのコードスケールは同じコードのシャープ系と同一のものを使用する。

つまり、♭VIo7は#Vo7のコードスケールを使う。

#Vo7のコードスケールはそのコードトーン(CT)にアプローチするコードを加えたスケールになる(上例ではBbo7 + Bm7)。

コードトーンの♭9上(つまり半音上)の音はAvoid(上の黒音符)となる。

② エクステンデッド・ドミナント

上は理解のために、Waveになる少し前のコード進行例を書いてみた。

ブルースで、4小節目と8小節目のセカンダリー・ドミナントのII – V が伸びて2小節になることは機能的にも問題ないのでよく起こる。

5小節目からのサブドミナントがマイナーになってIII−7に向かう進行も定番の進行である。

Waveでは更に上の進行からエクステンデッド・ドミナント(Extended dominant)に変わっている。

エクステンデッド・ドミナントとはドミナント(ここではA7)から前にさかのぼってドミナントを連続させるテクニックだが、この場合には m7thコードが 7thになっただけである。

更にドミナントのA7には裏コードのBb7が装飾的に加えられた。

④ ドリアン・モードに変化

ブルースのAセクション最後の2小節はモードがドリアンに変わっている。

モーダルインターチェンジと考えてもいいと思うが、この部分はイントロにも使われており、モードが変化したと強く感じる。

アイデアの元はTake Ten (Paul Desmond、1963年リリース)かもしれない。

take tenはA セクション全てがドリアン・モードでWaveと同じDm7 – G7 だけで書かれている。

作曲で他人の曲からアイデアを得た場合に、その痕跡をわざと残す例はよくみられる。

Waveの場合は、Take Tenと同じキー、同じCadence code(ここではG7)が残されたと考えるとWaveのキーがD であるのが納得できる。というのは考えすぎか?

モードに関しては当サイトのジムノペディ・アナライズに説明があるので参考にしてほしい。

⑤ Dual function 

ブルースのAセクション最後のG7はBセクションに動く時は、FキーのドミナントC7に向かうドミナント(V7/V)として機能する。

つまりBセクションでは転調しているが、このG7はそのピボットコードでもある。

最後の矢印はそのG7が2つの機能を持っていることを示している。

⑥⑦ B セクション

B セクションは、Jobimが好きな、同じメロディーが転調して繰り返すパートになっている。

⑥から⑦へは全音下に転調するポピュラーなテクニックが使われている。

I キーがモードが変わって I m7になり、それが II m7として機能して(ピボット・コード)全音下に転調するというHow High The Moonで有名な転調形式である。

⑦のEbキーからAセクションのDキーに戻るのは、I maj7が bII maj7として機能し(ピボット)半音下に転調している。

bIImaj7はAll the things you areアナライズに説明がある。

これと同じ半音下に転調する例はAireginで多用されている。

⑦ のコード進行は原曲では別の物が使われているが、メロディーが転調する場合はコードも転調するのが常であり、理論的にはここに挙げた進行が納得できる。

ジャズではこの進行が使われることが多いように思う。

原曲のコード進行も機能は同じである。

メロディーのアナライズ

③ に、元がブルースということを示すためなのか、ブルース・スケールでメロディーが書かれている。

⑥と⑦は同じメロディーで転調している。

エグザクト・シークエンスのメロディーと言える。(The Girl From Ipanema 参照)