If You Never Come To Me アナライズ

1964年に Inutil Paisagem という曲名で発表されたこの曲は、後に英語の歌詞と共に If You Never Come To Me という曲名が付けられた。この曲の特徴は初めのコンスタント・ストラクチャーと最後のエクステンド・ドミナントにある。よく似た曲としてG. Gershwinの Of Thee I Sing がある。

先ず、曲とそのアナライズを見てみよう。

 コンスタント・ストラクチャー Constant structure は1960年代にHarbie Hancock と Bill Evans によって試みられた方法で、同じコード・タイプ(ここではMaj7)が連続して現れる。2小節目のBmaj7はVIImaj7となり、そのようなコードは機能コードとしては存在しない。maj7コードが連続して現れ、機能を持たないコードも含まれているため、ここはConstant structure と考えるのが妥当であろう。メロディーが半音で連続上行しているので、コードを半音で連続下行させたことは容易に想像できる。

本来 Constant structureの3つのmaj7コードは同じ表記であるべきであるが、楽譜ではCmaj7 | Bmaj7(add13) | Bbmaj7(b5) となっている。(add13)はメロディーがテンションの13だからであるが、通常のテンションなので表記は不要。(b5)は Lydian を表しており(#11)との表記が正しいと思われる。これもメロディーに無い音なので特に必要ないが、Chord scale が Lydianだとの主張、つまり転調した I コード(トニック)ではなく、bVIImaj7 であるという表示であろう。

Tom Jobim がどれだけConstant structure を意識して作曲したかは、オフィシャルサイトの譜面がないのではっきりしないが、理論的には Constant structure で説明できる。作曲年で見るとConstant structureの初期であり、微妙なところではある。

この最初の3小節と同じメロディーが Gershwin の Of thee I sing という曲である。Constant structure はリハーモナイズでも使われるが、Of thee I singをConstant structure でリハモしたのが If You Never Come To Me と言えるぐらいの3小節である。


Constant structure のコード進行は同じ種類のコードが連続して進行するものをいう。Major 7thやminor 7thだけでなく様々なコードタイプが使われる。イントロやエンディング、ターンバック、部分的にコントラストを付けたいときなどで使われるが、リハーモナイズとしてもよく使われる。

同じコードタイプのシリーズ(Constant structure)は機能に関係なく同じコード・スケールが適用される。

Constant structure は Non-Functional(非機能和声)と Functional(機能和声) の間に位置するコードと考えられている。次のようなタイプがある。

 (1)静的なメロディーの場合に Constant structure を使ってコードを細かく動かす場合。(2)同じメロディーが短く音高が変わって繰り返され、コードも一緒に動く場合。(3)メロディーと違う動きのコードが付けられた場合。(4)メロディーの動きに関係なく同じタイプのコードが連続する場合で、各コードが機能を持っている場合。

(2)で、ドミナント・コードが短3度までの一定間隔で上行する場合はContiguous Dominant と同じになる。 If You Never Come To Me は(3)に相当する。

コンスタント・ストラクチャーの例として Tell me a bed time story を挙げる。

この曲の Constant structure は Bmaj7 | Gmaj7 | Emaj7 | Cmaj7 |の部分で、maj7 コードの Do Mi Sol Ti を反対から読んだ(Retrograde)順になっている。また、29小節目から4小節は minor 7th コードの Constant structureとなっている。これらのコードはアナライズしてみると機能コードとしても働いていることが分かる。あまりにおもしろいので、次回にジャズ理論の項に載せようと思う。

Constant structure の説明が長くなったのでもう一度アナライズを載せる。

 ここは2小節にわたり内声の動きをコードネームで表しているだけで、サブドミナント・マイナーの Fmだけでもいいところ。ジャズ的に Fm7 | Bb7 とするとよくある進行、D-7 | D-7 | Fm7 | Bb7 | Em7 に近くなる。

 同じコードタイプの 7th コードが続くが Constant structure ではない。ドミナント・コードが連続するエクステンド・ドミナント Extend dominant である。

エクステンド・ドミナントはドミナント・コードが曲の(時間的な)前に向かって伸びたものであり、ダブル・ドミナント(V7/V)に向かうドミナントが続いたと考えてもいい。ドミナントが連続すると調性が失われ、途中の分析のローマ数字は意味が無いので表示しない。

 この F7 をドミナントと捉えると Cmaj7 への動きが奇妙に見える。F7をサブドミナントと考えるとPlagal ケーデンスの IV7 | I で、IV7 はブルースコードまたはDorian モーダル・インターチェンジ・コードと考えられる。このコードは楽譜をみるとF7(#9) となっており、Ab音(#9 または m3の音)を含むためかこのコードをFm7としているものもある。この方が理論的には納得できる。

しかし、楽譜では3度のA音どちらも使われていてドミナント・コード扱いである。ドミナントと考えると、このコードは subV7/III となる。つまり、Em7 に向かうセカンダリー・ドミナントであるB7 の裏コードの F7 で、Em7に行かずに同じトニックの I コードに偽終止が起きた。ここで問題は、 B7 が偽終止でCmaj7 に向かうことはあるが、最後の終止形で偽終止は考えにくい。加えて、裏コードの F7 がCmaj7 に偽終止は更に考えにくい。しかし、理論的には問題ない。

フランク・シナトラの音源を聞いてみると確かにスッキリした解決感がない。はぐらされているような気分になる。やはり偽終止なのか? 


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