DINDI アナライズ

Tom Jobimの最初のボサノバと言われているNo More Blues(1958年)の翌年に作られた初期の作品 Dindi は、モーダル・インターチェンジ、ブラジリアン・ハーモニー、頻繁な転調に特徴がある。C.Parkerの Yardbird suite がヒントとなったと思わせる共通点がいくつかある。

 

難解なコードがあるので、その分析から始める。

 Bbmaj7C Mixolydian mode から借りてきたモーダル・インターチェンジ・コード bVII maj7 である。bVIImaj7 を使うことでブルースコード(I7)を使わずにブルース・フィーリングを出すことができる。 コード・スケールは Bb Lydian スケール(Bb C D E F G A)となる。

同様の使われ方は Spring Can Really Hang You Up The Most( Tommy Wolf、1955)でも見られる。

 

 G-7 ( V-7 )もブルース・フィーリングを出すために使われるモーダル・インターチェンジ・コードとして使われている。

Tom Jobim の Double Rainbow ではこの V-7 が頻用されている。

 

 F -maj7 :  – maj7 コードはHarmonic minor や Melodic minor のトニック・ コード( I -maj7 )として存在するが、 IV -maj7 が現れることがある。

ここでの使われ方は、その前の小節から

F maj7  |  F -7  |  C maj7  |

と動くのが通常であるが、メロディーとの関係で7度がフラットできなかったため F -7 が F -maj7に替えられた。F -maj7の理論的根拠はF -7と同じサブドミナント・マイナーであるD -7(b5) の変形と考えられる。

 

ブラジリアン・ハーモニー :通常、Bossa Nova のコードはジャズ・コードと同じもので書かれる。しかし、Bossa Novaでは3度がbass に来た場合に特有のコード名が使われることがある。マイナー系の II -7(b5) の3度の音がbassに来る第一転回形では IV -6 と表示される。(Harmonic minor でも同じ)

D -7(b5)       G7       C m     ⇒        D -7(b5) / F     G7       C m

⇒  F -6        G7        C m

 

 C -6  : コードだけを見ていると、C -6 や転調したBb -6 は C maj7 や Bb maj7がマイナーにモードが変わっただけと思ってしまう。アナライズは必ずメロディーを見よう。

メロディーは完全な E Harmonic minor で書かれている(m3 , ♭6 , ♮7)。ということは、この4小節は E マイナーに転調していると考えるべき。

では、C -6は bVI -6 なのか? そのようなコードはない。

A-7(b5) の3度が ルートに来たコードが C-6 であるが、IV コードは A-7 で A-7(b5) ではない。

C-6 は A -7 の変化した A-7(b5) のルートが3度になったものと考えてもいいかもしれないが、もう少し掘り下げてみよう。

Harmonic minor の4番目から始まるコード・スケールは上記のようになり、Dorian #11 と表現できる。この中でTension として使えるのは 9th と #11 である。

IV -7 の #11 (D#音)はメロディーとして使われているので、表記するとA -7(#11) となる。

IV -7 の 5度 (E音)はA-7 の完全5度の音で(ルートの3倍音として聞こえ)あまり重要ではないため除外、Tension #11をコード・トーンにすると結果としてC -6 コードと同じになる。(変化させた(Altered)という意味ではA-7(b5) に代えたことと同じ)

コード・スケールは E Harmonic minor の6番目からスタートするスケールになるので、C  D#   E   F#   G  A   B の音列は C Lydian #9 と表現される。マイナー6コードなのにLydian とは良くない。元の形である A dorian #11 で考えた方がいいように思う。

 

コード・アナライズ

Verse

4小節毎の key of C と key of A の繰り返し。

Aに転調したとき明るく感じ(#が3つ増える)、Cに戻ったとき暗く感じる(♭が3つ増えるのと同じ。または、#が無くなるのでA: から Am: へと感じる。)。更にブルース・フィーリングをもったbVIImaj7 により、更に暗く感じる。

 

A section

Yardbird Suite では2小節目のサブドミナント・マイナーはトニックに解決するが、そのコードは I 7 のブルース・コードである。この曲では bVII maj7 を使ってブルース・フィーリングを出している。

5,6小節はドミナント・ケーデンスが使われることが多いが、この曲ではサブドミナント(マイナー)のPlagal ケーデンスとなっている。

曲を通して、ドミナントコードが5度下に解決するのは、A section の IVコードに向かうセカンダリー・ドミナントと転調するときのみという少なさである。

 

B section

B section はYardbird Suite の B section とよく似ているが、Yardbird Suite の転調かどうか曖昧なのに対して、はっきりと転調している。メロディーはHarmonic minor のみで書かれているし、コードも一緒に転調している。

Yardbird Suite の マイナー系 II- V- I ケーデンス に対してサブドミナント・マイナー・ケーデンスが使われている。

 

転調と移動ド での歌い方

B section のように同じメロディーで転調する場合は移動ド で歌い替えする方法が有利。転調は多いが歌い替えは可能で、メロディーの分析にもなる。

歌い替え方法の実際

次のような方法で、最初に任意の Do を鳴らしてからゆっくりと歌えば楽器が無くても正確に歌うことができる。

(1)Re を歌って、同じ音高で Fa と歌い替える。

(2)C#の音は次の Cキーの Di に相当するので Mi (A:) をDi (C:) と歌い替えてもいいが、難しい。ここに紹介した方法は、次に歌う音を今のキー(A:)でイメージしてから歌う方法。

① Verse頭の Mi (C:) に戻るときは、AキーのSol をイメージして Mi と歌う。

② A sectionの Sol (C:) に戻るときは、AキーのTe をイメージして Sol と歌う。

(3)Ti (C:) をイメージしてからその同じ音高で Sol (Em:)と歌う。

(4)全音下の同じメロディーを歌うのは慣れてくるとそれほど難しくはないが、難しいようなら、Fa (Em:) をイメージし、Sol (Dm:) と歌う。

(5)Re (Dm:) をイメージし、Mi (C:) と歌う。